5時起床。すっかり春めいてきたとはいえ、さすがこの時間はまだ暗い。いつものように野菜ジュースを入れた500mlペットボトルを風呂に持ち込み、ちびちびと飲んで眼を覚ました後、やがて明けた空の下をjog。124分。今日は高円寺の円盤というライヴスペースで
三村京子さんのライヴ。昼間は自分なりにもう一度コード譜を書き直して構成を確認したり、ちょこっとだけおさらい的に個人練習してから出かける。4バンドが集うイベントというカタチで、高円寺界隈ではよく行われている形式だそうだ。あるアーティストやバンドが主催し、友達やライヴハウスの対バンで知り合ったバンドなんかに声をかけて催す。今回はとても個性的な音楽家・スッパさんこと。スッパマイクロパンチョップ氏の仕切りで〈スッパの思う壺〉というタイトル。定例で行われているシリーズだそう。
円盤は音楽評論家で、オズ・ディスクというインディーズ・レーベルの主宰者もある田口史人氏が経営するスペース。喫茶店兼中古CD屋さんのような場所。普通の本屋さんではなかなか手に入らない古本なんかも並んでいて、僕はひと目で馴染んでしまった。空間が狭いので、ヴォーカル以外は生音。古いアップライトピアノがあって床は板張り、ザ・バンドの写真で良く見るピックピンクの地下室のようだ。通常のライヴハウスのようにステージがあるわけではないので、バンドのメンバーがお互いの顔を見つつ、くるりと輪になって演奏しているのを、お客さんというよりも友達が練習に遊びに来たみたいな感じで観ているのも楽しい。
対バンも良かった。ベースレスでギター二人にドラムスという編成の
MOXA DELTAは、トム・ヴァーラインのテレヴィジョンをヘナヘナにしたような音でスカっぽいリズムをやる若い男の子三人組。ディーヴォのようでもある。リズムボックスを操る女の子にSGベースとリコーダーを吹く女の子、それにギターの男の子という
ぴぺぷぱは思いっ切りローファイなテクノだけれど、お客さんはクスクス笑いながらもけっこう踊っていた(僕も)。そしてあがた森魚というか初期の渡辺勝というか、たまの知久寿焼をさらに個性的にしたようなスッパさんの唄に、時折前衛ジャズのような演奏がかぶさる
スッパバンドと、自分が演奏するんじゃなければ酔っ払いながら観たかったなあ。
酔っ払いと言えば、リハーサルの時から来ていたスッパバンドのファンというか、自分でも宅録をやっていて、中学はイジメにあって辞めちゃって定時制の高校卒業して今は障害者の人達の介護ヘルパーやってるんですぅという若者がいて、ライヴの途中「ミキさぁ〜ん」──何故かコイツは初対面の僕をこう呼んだ──「ボク、もうお金無くなっちゃんでタカッてイイですかぁ」と言ったのが面白かった。「じゃあ、オゴッてやるからオレのぶんもビール買って来いよ」と千円渡す。ああ、久しぶりこういうイイ感じにダメな若いヤツと会ったなあと嬉しくなる。自分の若い頃を見ているようだ。千円札一枚で二人分のビールが飲めるというのも嬉しい。
終わってからは詩人で評論家の
阿部嘉昭さん──三村さんは元々早稲田大学に於ける阿部さんのゼミの学生で、阿部さんは三村さんの作詞に協力している──も交えガード下のヤキトリ屋で飲んでいたらアッという間に終電を逃してしまい、久しぶりに高円寺から青梅街道をタクシーで帰る。ギターを持ってるので「お客さん、音楽やられるんですかぁ」となり、47才だという運転手さんは「実は私も姉の影響でKISSが好きだったんですよー」という話で盛り上がる。僕の方もホロ酔いなので「KISSのメイクは日本の歌舞伎に影響を受けたというけれど、実はジーン・シモンズがアラブ系で、アメリカでは人種的マイノリティのエンターティナーは売れないという法則があって、だから顔を隠したという説もあるんですよねー」なんてトリビアを言ったりして。
アパートの前まで送って貰いお金を払い、「それではお気を付けて、おやすみなさい」「お世話さまでした」と車を降り歩き出すと、運転手さんが「お客さぁ〜ん!」と叫ぶ。何事かと思ったら僕の携帯がコートのポケットから転がり出たようで、シートに落ちていたのだ。イヤハヤあぶないところだった。これもKISSの話で盛り上がり打ち解けたゆえだったかもしれない。最後まで音楽に救われた一日でした。
追記 三村京子さんのこの日のセットリスト、ライヴ・レポートは
広報kozさんのブログにあります。