金縛りに遭いますか? 僕はけっこう頻繁に経験します。ふた月に一度くらいだろうか。かと言って別に霊的な体験ではない。要は脳と身体の疲労のバランスが崩れる時になるようだ。眠っていて、アタマは起きるのだが身体が目覚めてくれない。だから身動きが取れない、まるで誰かに魔法をかけられているようになる。このところ気候が良いこともあってやたら走るのが楽しい。精神のテンションも高いので5時か6時には起きてしまう。身体はけっこう疲労しているようだ。だから夕方近くになって「さてもうひと頑張り」と思う前に30分ほど昼寝をする。そんな時にたいてい、なる。それにしても今日のは少し強烈だった。
夢を見ていた。僕は北京のホテルにいる。何故北京なのだろう? 6者協議がその地で行われているというニュースが何処か頭の片隅にあったからだろうか。夢というのは不思議だ。いつだってそんな、あまり気にもとめていない、まさに頭の隅の方に追いやられた出来事によって左右される。僕はミュージシャンで、中国にツアーに来ているという設定だ。ホテルの一室、ベッドに座り相方と共にギターを抱え弾きながら打合せをしている。彼が誰なのかは判らない。一昨日、日記に書いた東京バンドのまじさんのような気もするのだがハッキリしない。
僕らは沖縄音階の曲を弾いているのだが、僕が上手く合わせられない。そこてフト、チューニングが違っているのに気づく。レギュラーからドロップDと言って6弦を一音落とす。さらに4弦を半音下げた──、これも後から気づいたのだが、やはり一昨日、阪本正義くんが打ち上げの席で観に来ていたミュージシャンの人に自分の変則チューニングを説明していたのだ。そこで、不意に地震が起きる。かなり大きい。僕は大いに慌てるのだが、相方のギター弾きが「大丈夫、高層ビルは地震に強いから」と言う。しかし揺れは尋常ではない。ビル全体が絶叫マシンのようにぶるんぶるんと動く、そこで眼が覚めた。
いや、正確に言うと眼は開かない。何たって金縛りです。ただ、自分が部屋のベッドの上に寝ているということだけは判る。揺れは続いている。「本当に地震なのか?」と思うのだが、それはやがて誰かがベッドを、御神輿のように担いで揺すっているようなほどになる。まるでポルターガイストである。そこでベッドを揺らしてるヤツらに気づいた。ネコだった。数匹のネコがベッドの上をぴょんびょん飛んでじゃれているのだ。5匹か、6匹か、いやもっといるか? その中に、死んだ我が家の相棒達もいるのだろうか──、そう思った時に金縛りが解けた。
窓の外は薄っすらと白く明るい。少しの間、夜明けに起きたのか、昼寝していて夕方になったのか判らなかった。ボンヤリとしたままリビングへ行って珈琲を入れながら、ブライアン・イーノの
『サーズディ・アフタヌーン』をかけた。CD一枚一曲、約60分の長い長いアンビエント。聴くでもなく部屋に充満するその音を感じながら、それにしもネコ達は楽しそうだったなと思った。太股の辺りに、ぴょんぴょんと飛び跳ねる彼らの足の感触が残っていた。