夕方より、11月1日に亡くなった友人・永沢光雄の通夜に行く。お寺は新宿区2丁目の正受院。一昨日、朝日新聞で場所を知った時、ああ、やはりこの場所から送るんだな、と思った。永沢が新宿2丁目に移り住んだのは確か90年頃、最初の奥さんと別れた、というか愛想を尽かされ逃げられた直後だったと思う。「飲み屋街の真ん中に住居兼仕事場を構えるなんてまるで探偵事務所みたいだろ?」と彼は言ったけれど、本音はいつだって酒のそばに居たかったのだろう。妻に逃げられ淋しくて人恋しくて、毎晩飲んだくれていた。深夜、バーのカウンターで泥酔しては、偶然隣に座った女性に必ず「結婚してくれませんか?」と訊いたという。当然の如く、ベロンベロンに酔っ払っている30男なんて相手にしてくれる酔狂な女なんていない。だけどある日、ろれつも回らないほど酔ってそう言った時、ニッコリ笑って「いいですよ」と言った人がいた。二人はその夜のうちに結婚することを決めたという。それが今の奥さんだ。
奥さんは今夜も少しも涙を見せず、集まった友人達に「ありがとね、ありがとう」とニッコリ笑って言っていた。今日ほど、自分がものを書く仕事をしていて良いと思った夜はない。仲間の書き残したことを、オレは書いていける。もちろん、誰にだって永沢光雄のように文章を書くことは出来ない。だけど、少なくとも自分にはその時間がある。その現実に感謝して、この先の日々を生きていく。ライフ・ゴーズ・オン。