今日も午前中から出かけなければならないので、午前3時に起き出して仕事を進めた。昨日睡眠が足りなくなると気分が暗くなると書いたが、こうして暗いうちに目覚めるのも妙に悲しい。どうにもやり切れない。人間はやはり朝陽と共に活動を始め、陽が暮れたらビールでも飲んで早めに寝てしまうというのが幸せなのではないか。23才のとき、とある編集プロダクションに入ったのだが、そこで一人のカメラマンと知り合った。名前はM氏。穏やかで優しい性格の人で、駆け出しで下っ端の僕みたいな若僧にも親切に接してくれた。あるときそのMさんが、「実は僕、若い頃に離婚しましてね」と語ったことがあった。
「若い頃」と言っても僕よりも3つか4つ年上なだけ。つまり20才そこそこの結婚だった。Mさんは師匠の写真家から独立してすぐに、フランスのとある街へ1年間仕事で滞在することになった。どんな撮影の内容かは聞かなかったが、若い彼にとっては大抜擢であったに違いない。だから奥さんも歓んで同行した。ところがその地方は、一年を通してほとんど陽の射さない土地だったという。日本では想像も出来ないが、ヨーロッパや北米ではそういうところがあるそうだ。「霧のサンフランシスコ」「霧のロンドン」なんかも同様かもしれない。するとどんよりとした気候の続く毎日に、奥さんはやがて心を病んでしまった。見知らぬ異国での孤独もあったかもしれない。
Mさんも悩んだが、掴んだチャンスを手放したくなかった。そこで奥さんだけがひとり帰国し、二人は最終的に離婚することになった。ところで1980年代初めまでは、「鬱病」という言葉が一般的ではなかったように思う。M氏も確か、「妻がノイローゼになりましてね」と言っていた。この言い方、最近聞きませんね。いつの間にか死語になっていたようだ。
テレフォン・ノイローゼ、悩ましく今日も暗闇にベルが鳴る──、
※写真は今朝。そんなワケでほんど眠ったような状態で中央線の吊革に掴まっていたら、不意に眼が覚めるように窓の外が白く明るくなった。中野駅、東京行きホームから見えるこの桜は毎年見事だ。data:iPhone6 #Instagram #MOLDIV #DAYLIGHT