今日も上手くいかない。朝方から眼が覚めるのだが少しも寝た気がせずに起き上がれない。今日は午前中に走って夕方にはジムに行こうと思っていたのだが、朝からボーッとTVのワイドショーなどながめてしまう。最近はハッと気づくと部屋がめちゃめちゃ汚れていたり新聞が溜まっていたりする。ノロノロと片付けて、いい加減に掃除などして昼からジムに行く。
僕はAVライターのくせにこの日記であまりAVのことを書かない。ジョギングがどうのジムへ行ってどうした、今日は何を食べたとか、ブルーズがどうのロックンロールがなんのとかばかり書いている。でも、じゃあAVについて考えてないのかというとそうでもなくて、けっこう毎日シツコク考えている。何故なら性への衝動とかポルノグラフィーというものは基本的に日常から抑圧されたカタチで無意識へと流れ出て溜まり、何かのキッカケを今か今かと待ち望んでいるような存在だからだ。つまり自民党が圧勝したとか民主党が下手すると存亡の危機に向かってしまうのか、というような一見まったく無関係な出来事からでも実は大きく変わってしまったりする──、
なんてコトをD-1クライマックス参加作品、黒田将稔の『lori lorii paipan』を観ながら考えていた。これはAV男優である黒田が長崎の故郷に帰省し、そこから実の妹をAVに出演させようと画策するのが物語の中心になっている。何故ならその少し前、彼は偶然つけていたTVに妹が出演し「兄がアダルトビデオ男優になっているのを知り悩んでいる」と告白しているのを見てしまったからだ。妹にAV男優が決して卑しい仕事ではないことを判って欲しい、そのために実の妹をAVに出させてセックスさせる。それはまあ強引すぎるほど強引な論理なのだが、その背景には彼の持つ家族への強い愛情や故郷長崎に対する郷愁にも似た執着がある。
元々、黒田将稔には監督第一作にして「ビデオ・ザ・ワールド」誌2004年上半期ベストワンになった『素人生ハメfile』という作品があり、そこでも故郷に帰省し、長年続けてきた青果業をたたもうとする年老いた父親の姿をカメラに収めている。今回の作品に関しても「ビデオメイトDX」誌のインタビューで、「AVライターの人って家族とか撮ると歓ぶじゃないですか」とうそぶいていたので何か企んではいるのだろうなとは思っていた。つまり上に書いたような“家族への強い愛情”というのも実は一筋縄ではないモノではあるのだが、まあ見事にやってくれたすごい作品になっている。
それにしても監督二作目、男優としてのキャリアを差し引いてもこの構成の冷静さ、撮影に対するテンションの高さはいったい何だろう? 前半部、帰省した黒田が心臓の病気で入院中のお祖母ちゃんを二度に渡って見舞うシーンがある。「今度会う時は病院じゃなくて家で会いたかね、バアチャン」と地元の言葉で優しく語りかける黒田と、彼の持参した曾孫の写真に眼を細めて繰り返し見るお祖母ちゃんの姿がある。黒田将稔にとって東京でのAV男優としての暮らしと、長崎の家族とではどちらが日常なのだろうか。