今日もTVは選挙一色だ。どうしてあの時世界貿易センタービルに登らなかったのだろうかと考えていた。結局友人とはポリスが声をかけてきた数10分後に連絡がついた。夕方になって女性のオペレーターが帰ってしまったのだろう、電話はオフィスに直接繋がり男の声が出たので「はろー、でぃすいずミキ・トーラすぴーきん」と言うと「何だよ、オマエか」と友人が呆れた声を出した。「ちゃんと俺が言ったようにEトレインに乗ってチェンバース・ストリートで降りたんだろうな?」と訊く。「ウーン、そうしたつもりだったけど迷ったみたいだ」「まあいいや、ともかくそこは安全な場所なんだろうな」「大丈夫。雰囲気はかなりヤバイけどポリスがいる」そう言うと友人はまた呆れたようなため息をついた。
その後友人とは無事、貿易センタービルの一階のとてつもなく広いロビーで再会出来た。「ともかく外に出よう」と歩き出した時、回転扉のガラスに我々の姿が映った。スーツにアタッシュケースを持った友人とジーンズにTシャツ、汚いザックを下げた僕が並んでいるのは明らかに異様だった。これがアメリカなんだなと思った。「まあ何を言っても貿易センタービルで働いてるってのはすごい出世だよ」と言うと、友人は「俺はワールドトレイドセンターに就職したわけじゃない。ただの富士銀行ニューヨーク支店のヒラ行員だよ」と言った。「でも世界一のビルだぜ」と言うと「シカゴのシアーズ・タワーに抜かれたよ」と答えた。
アメリカに行ったら高いビルに登ってみたいと思っていた。だからシカゴでは友人の言ったシアーズ・タワーにも、シカゴ・リバーを見下ろすジョン・ハンコックにも登った。NYでもエンパイア・ステートビルにも登った。たぶんあのビルが消えて無くなってしまうなんて想像すらしなかったのだ。今になってあの美しいビルのことばかり考えるのはやはり気分が暗いせいだろうか? 郵政は民営化された方が良いと思うけれど、自民党の圧勝には何かヤバイなという気持ちもある。明日は取材が二つ続いてある。忙しくなれば少しは気分も変わるのだろうか。