陽が暮れてから近所のスーパーへと自転車を走らせると、空に月がポッカリと浮かんでいた。<ポッカリ月が出ましたら、舟を浮べて出掛けましょう。波はヒタヒタ打つでしょう、風も少しはあるでしょう。>とは中原中也の「湖上」(詩集『在りし日の歌』より)の一節。いいですね。僕は特に中盤のくだりが好きです。<月は聴き耳立てるでしょう、すこしは降りても来るでしょう、われら接唇(くちづけ)する時に、月は頭上にあるでしょう。>、ウーン、ロマンチックとはまさにこのことではあるまいか。
ところで、1970年代日本のロックを代表するバンドのひとつ、はちみつぱいに
「月夜のドライヴ」という名曲がある。<ポッカリ月が出たら、スポーツカーで出かけましょう>という出だしは、中原中也「湖上」を現代に甦らせた、最高のオマージュに違いない。はちみつぱいの楽曲はほとんどがリーダーの鈴木慶一さんの手によるものだが、これはオリジナル・メンバー山本浩美さんの作詞作曲。リンクしたのは1988年「汐留PIT」のライヴ。やっぱりいい曲だなあ。
※ということで、写真は団地の屋根の上にポッカリと浮かぶ月。data:iPhone6 #Instagram #MOLDIV #VIVID