集中して原稿を書いていると、ときにふっと意識が遠のくような瞬間がある。自分とこの世界を繋いでいる何かが外れ、糸の切れた凧のように宙をさまよってしまう。ここがどこなのか、今がいつなのか、自分が何歳なのか誰なのかも消えて、ただ「私」という形の無いものだけが、部屋にぽっかりと浮かんでいる。もちろんそれはほんの一瞬のことで、すぐに「〆切が迫ってる」とか「お腹、空いたな」という些末な現実が世界へと引き戻してくれるわけだが。
テレビを点けるとワイドショーではASKA氏の不起訴・釈放という話題をやっている。「盗聴されている」「appleのアカウントが1週間で2回も書き換えられた」「ギフハブが僕の携帯にアプリを埋め込んだ」というのは、言われているように薬物の影響なのかもしれない。けれど、彼にとってはそれが紛れもない現実なのは確かなんだと思う。僕らが今、当たり前に確かな現実だと捉えてる世界なんて、何とも頼りない凧の糸あってのことなんじゃないか? そんなことを考える。
※写真は昨日の正午過ぎ。打合せに出かけるとき、中央線武蔵小金井駅ホームを写す。この季節の晴れた日は、光が独特だ。まるで、核戦争で世界中の人々が死に絶えた後の風景みたいだ。data:iPhone6 #Instagram #MOLDIV #TIMBER