午後になってテレビを点け、観るでもなくワイドショーを流していて、キンキンこと愛川欽也さんが亡くなったことを知った。写真はキンキンの監督第一作『さよならモロッコ』のパンフレット。有楽町の映画館「ニュー東宝」で観た。「シネマ1」と「シネマ2」どっちだっけ? 確か地階の方だったはずと記憶を辿っていたのだが、やはりそうだった。Wikipediaに<1974年公開。有楽町にある東宝系の映画館「シネマ2」を「貸し小屋」として上映された。>という記述があった。この映画は予算すべて持ち出しの、完全自主制作で作られたからだ。僕らの世代はキンキンと言えば何はともあれ『パックインミュージック』水曜日(火曜深夜・TBS)のパーソナリティ(70年代にはディスクジョッキーのことをこう呼んだ)だから、その撮影や制作の過程についてはリアルタイムで聴いていて、当然のように封切直後に駆けつけたというわけだ。74年ということは、高校1年だった。
他にもジャック・レモンの吹き替え、『いなかっぺ大将』のニャンコ先生、情報番組『リブ・ヤング!』司会での、ロンドンブーツにグラムロック風ジャケットもカッコよかった。何しろキンキンは青島幸男、永六輔、前田武彦に続く、いわゆる「マルチ人間」の系譜にいた人だから、その活躍は多岐にわたった。文章家としても超一流で、処女作
『じんじろげの詩』は一見タレントの書いたエッセイのような作りだが、中身は粋なショートコラム集だった。『さよならモロッコ』のパンフレットには、<最近、僕らの世代がはしゃいています。皆さん、40歳を過ぎた人たちばかり。>という一文がある。つまりキンキンは僕らにとって、歳を取ってもカッコいい世代の始まりであり、大人になんかならなくていいんだ、ずっと子どものままで生きなさいと教えてくれた、最初の「大人」であった。キンキン、ありがとう。どうぞ安らかにお休みください。
※『さよならモロッコ』はキンキン演じる映画狂の中年CMディレクターが、撮影で訪れたモロッコでパリからやって来た女優の卵、マリーテレーズ(クロディーヌ・バード)と出会い恋に落ちるラブ・コメディ。キンキン版『カサブランカ』、もしくは『ボギー!俺も男だ』である。data:iPhone6 #instaplus #Velvic #RVP100