夜、録画しておいた『幸福の黄色いハンカチ』を観る。この映画が公開された1977年10月、僕は高校を卒業して浪人中だった。だから実際観たのは翌年大学に入り、上野の映画館でアルバイトを始めた頃だったと思う。そこは松竹系の会社だったので、おそらくリバイバル上映された時、無料で観たのだ。高校時代はアメリカン・ニューシネマとATG映画を観まくり、大学に入ってからはゴダールの上映会などに通っていた生意気盛りの映画青年にとっては、「よく出来てはいるれど、まあ、それだけの映画」という印象でしかなかった。つまり「タダだから観た」、「山田洋次? 要は大衆受けするだけのプログラム・ピクチャー監督でしょ」という失礼極まりない態度である。しかしそれが、50代の後半になった今ではまったく違う(ちなみに高倉健さんは撮影時46才だ!)。途中、渥美清が田舎の警察官役で突然登場する場面には鳥肌が立ち、物語後半より、主人公・勇作(高倉健)の回想が進む頃には涙がホロホロと出た。HDDに録画したので、これからも何度か見直すと思う。