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今日は久しぶりにアダルト系の原稿を書いた。『ビデオ・ザ・ワールド』誌の最終号が出たのが昨年5月、つまりは約13ヶ月ぶりとなる。いやはや。ともあれテーマは、1980年代初頭に「裏ビデオ」と呼ばれる非合法なポルノグラフィが出廻った頃のお話である。『洗濯屋ケンちゃん』なんてタイトルを言えば、ある世代以上の男性なら、ハハアと思い出して頂けるかもしれない。この時代は『代々木忠 虚実皮膜 AVドキュメンタリーの映像世界』で書いたことともリンクするのだが、家庭用ビデオデッキの普及、つまり「ベータ・VHS戦争」と呼ばれる販売競争とも関わっている──というようことを考えつつキーボードを叩いていると、フト、「あれ、オレ、以前にも同じような原稿を書いたな?」と思い出し、今書いているテーマの参考にもなるので、iMac内を探して引っ張り出し再読してみた。
そして「フムフム、けっこうちゃんと書いてるじゃないの」などと他人事のように呟いてみるものの、何ンか違和感がある。何だっけ? と考えてるうちに思い出した。そうだ、自分なりに苦労して書き、編集担当さん(若い女性だった)も「すごくいいですぅ」と誉めてくださったのだが、編集長氏の判断では「悪くはないのだが特集のテーマと微妙にズレてしまう」ということで何度か改稿し、そのうえ校正の段階で編集部の手が大幅に入ったりして、最終的には原形を留めない文章となって誌面に載ってしまったのだ。こういうのは書き手としては非常に残念ではあるが、しかしマアそういうことをいちいち気に病んでいたらフリーライターなんて商売はやってられない。だからおそらく「早く忘れてしまおう」と考えたのだろう、それでまったく内容を覚えてなくて、妙な違和感があったのだ。まるで自分が書いた文章ではいような──、 というワケで生まれたものの世に出なかった子ども(←原稿のことですね)の供養という意味で、本日はその文章を下記に貼っておきます。ウェブで読むには少々長いかもしれませんが、興味のある方、お時間のある方は眼を通して頂けたら幸いです。ではまた、ごきげんよう。さようなら。 ミスターVHSと呼ばれた男 “ミスターVHS”と呼ばれた男がいた。 高野鎮雄。1970年代半ば、“世界のソニー”相手に絶対的不利と言われたビデオ戦争に勝利し、VHSを世界規格へと押し上げた立役者。当時の日本ビクターVTR事業部長である。高野の残した伝説はノンフィクション作家・佐藤正明著『映像メディアの世紀〜ビデオ・男たちの産業史』(日経BP社)に書き記され、柳田邦男による『日本の逆転した日』(講談社)にも残されている。また、高野と彼の部下が元々は「会社のお荷物」と言われたリストラ寸前のサラリーマンだったこともあり、その物語はNHKプロジェクトX『窓際族が世界規格を作った〜VHS・執念の逆転劇』として放映され話題を呼び、2002年には佐々部清・監督、西田敏行・主演の『陽はまた昇る』(東映)として映画化もされた。高野鎮雄と彼の仲間による物語が、何故ここまで人々を惹きつけるのだろうか? そこを探っていけば、我々は「仕事」というものの意味、人と人とが手をたずさえて何かを作り上げるとは何なのかという回答へとたどり着けるだろう。 そもそも本社試作工場で16ミリ映写機や放送用機器の開発に取り組んでいた、いわば純粋な技術屋であった高野鎮雄が、管理職である業部長就任を命じられたのは1970年。そこは横浜工場の片隅にあるまさに窓際、事業部長になった者は一年でクビが飛ぶといわれた左遷人事であった。当時のVTR事業部とは、本社が設計した業務用ビデオを組み立て企業やホテルなどに売って歩くという部署であったが、その頃のビデオデッキと言えばやっとカセット型になったとはいえ3/4インチ(テープ幅)の大型。価格も現在に換算すると120万円以上、そして何より非常に故障が多く二台に一台は返品されてくるという有り様であったという。社員220人の給料さえまかなえず、本社への借金は10億円にも達していた。 それでもビクターがVTRから完全に撤退しなかったのは、次に訪れる家庭用VTRの時代に一縷の望みを掛けていたからだろう。もしもビデオデッキが小型軽量化され日本はもとより全世界の家庭に普及すれば、それは5,000億円市場になると予測されていた。しかしながらその開発のトップを走っていたのは、なんと言っても盛田昭夫率いるソニーであった。当時のソニーは大卒技術者の人気ナンバーワン企業であり、開発チームには100人にも及ぶ超エリート達が顔を揃えていた。 一方、その頃のビクターは深刻な経営危機を迎えていた。経営陣は大幅な人員整理を断行。本社にあった家庭用VTR開発部門は閉鎖が決められ、今後は新製品の開発をやめ、既存の業務用VTRの改良と販売のみを行うという決定がされた。よって本社から50人の技術者が高野の事業部へと移されてきた。開発部門から製造部門へ廻されたことで技術者達は大いに落胆したというが、高野はやってきたその顔ぶれを見てむしろ「願ってもない宝物を貰った」と歓んだそうだ。何故ならビクターには大正15年、世界で初めてブラウン管に「イ」の字を映したことで有名な高柳健次郎という伝説的な技術者がおり、彼ら50人はその愛弟子達だったからだ。高野は高柳の片腕と呼ばれた白石勇磨という技術者を呼び出し、本社に極秘で家庭用VTR開発を指示する。そんな高野直属のスタッフは、白石の他は梅田弘幸、大田喜彦というまだ20代だった工業高校卒の若者。たった三人の開発プロジェクトがスタートした。 しかし本社は続けて合計2.600人の合理化を推し進めていた。当然、高野の事業部にも取りつぶしの議論が持ち上がる。事業部長になって三年、業務用VTRの在庫は山積み、毎月5000万ずつの赤字。本社への借金は30億円を超えた。本社は高野に技術者の三割減をも要求してくる。しかし、高野には部下のリストラをすることがどうしても出来なかった。その代わり、彼は「システム開発部」という新しい部署を作る。「開発」と名は付いているものの、その実質は営業だった。開発にあぶれた技術屋達に「自分の給料は自分達でVTRを売って稼いできてくれ」という苦肉の策であった。ところがこれが思わぬ効果を生む。この直販部隊は技術者の眼で、消費者がどんなVTRを必要としているのかを肌で感じるようになるのだ。それまで業務用VTRと言えば、企業やラブホテルに営業をかけるのが普通だった。しかしこの技術者集団は芸能人やタレント、日本舞踊のお師匠さんからゴルフ練習場、スイミングスクールと言った新しいユーザーを開拓する。そして、その中からニーズ優先という発想が生まれるのだ。ユーザーのニーズとは何だったのか? まずそれは、従来の録画時間は使い手にとってあまりにも短すぎたということだ。映画、スポーツ番組を録画するには最低2時間が必要。この最低条件が、後にソニーのベータマックスを打ち破る最大の武器となる。 ところで、高野は何故部下のリストラを出来なかったのだろう? それほどまでに温情の人であったのだろうか。確かに前述のプロジェクトX『窓際族が〜』には当時の経理部長・大曽根収が出演し、「とにかく部下を大切にする人でした」としみじみと語っている。しかし我々が現在の眼で「温情の人」と捉えてしまうと、高野鎮雄という男の偉大さをかえって見誤ってしまうことになる。高野が何故部下を切らなかったか? それは部下ひとりひとりの持つ小さいけれど確かな力を無駄にしたくなかったのだ。映画『陽はまた昇る』には西田敏行演じる事業部長(役名は加賀谷)が、工場をひとりひとりの部下の名前をブツブツと呟きながら覚えて廻るというシーンがある。実際、高野は技術者全員の特技特性をすべてファイリングして頭に叩き込み、生産ラインに立つ女子社員の名前まですべてくまなく憶えていたという。そして工場内には営業、技術、開発、生産といった仕切りを一切設けなかった。これによって営業が外から得てきたユーザーのニーズが生産に反映され、技術、開発の現場の声が営業にフィードバックされるという現象が起きた。 これ、今の感覚でいうと何かに似ていないか? そう、ウェブの世界で少し前から散々言われているオープンソース、ロングテールという発想だ。これらの考え方を我が国で一躍有名にしたベストセラー『ウェブ進化論』(ちくま新書)の中で、著者の梅田望夫は「誰もが子供の頃に“一億人の人から一人一円ずつ貰えば一億円になる”と考えたことがあるはずだ」と書いている。高野鎮雄が考えたのもコレだった。優秀な技術者を100人カンヅメにして頭を絞らせるよりも、一般の人、市井の臣からほんの少しの小さな知恵でもいいからたくさん集めること。だから高野は部下を切ることが出来なかった。技術者はもちろん、生産ラインで組み立てを担当する女子社員に至るまで、誰もが小さいけれど知恵と力を持っている。そして彼、彼女らには家族も友人も恋人もいるだろう、そのすべてから情報を集めることが大切だった。つまり一般の人、物言わぬサイレント・マジョリティ達がいったいどんな家庭用ビデオを欲しているかを知ること、それこそがニーズ優先という発想であった。 74年12月、ソニーは遂に家庭用VTRベータマックスを発表。一方、たった三人の開発プロジェクトでスタートした高野らのVHSがその試作機を完成させたのは翌75年の8月。ベータの販売開始からもすでに3ヶ月遅れていた。ただ、VHSはベータより約5キロ、重量が軽かった。その軽さこそがビクター技術屋営業部隊のリサーチしたユーザーのニーズであり、結果的にはVHSがビデオ戦争に勝つ最後の要因になる。高野鎮雄はVHSの真価とその正否を、当時の松下電器相談役・松下幸之助に託す(松下はビクターの親会社である)。ある日黒塗りのハイヤーで横浜工場を訪れた家電の神様は、出来上がったばかりのVHS試作機を撫で回し、頬ずりするように確かめたと言われている。そして最後にはすでに80才を越える高齢であったにも関わらず、そのビデオデッキを「よっこらしょ」と持ち上げたそうだ。そのシーンは映画『陽はまた昇る』の中でも実に印象的に描かれている。仲代達矢演じる松下幸之助は、西田敏行の事業部長から「録画は2時間を基本にしております」と聞かされ「それはええ、お客さんの買うテープが少なくて済む」と微笑む、続いて史実通りVHSを持ち上げこう言うのだ。「ひとつ良いことを教えてあげよう。お客さんが自分の手で持ち帰ることの出来る商品は、配達の必要のあるものの10倍売れる」と。ベータとVHSの明暗が分かれたのはココだった。ソニーの誇ったエリート技術者達の圧倒的な能力よりも、実際にビデオを買って家庭で楽しむ名も無い人々の声なき要望の方がわずかに上回ったのだ。 さらに高野はひとつの決意を持っていた。それは4年の歳月と部下達の努力のすべてをかけて作り上げたその試作機を、惜しげもなく他社に無条件で貸し出すというものだった。彼には信念があった。それは、大切なのはVHSという規格を世界に広めるということだ。もちろん社内には戸惑いはあった。しかし高野は「ビクター一社で世界規格を作り上げることは出来ない。目先の利益は捨てるべきだ」と力説した。そして高野鎮雄は大手メーカーを次々と訪問する。日立、三菱、シャープ、どの会社の技術者も、VHSという製品の完成度に驚くと同時に、普通なら当然企業秘密にしておくべき試作機を無条件に貸し出すというビクターの、高野の心意気に「この人となら」、ひいては「このメーカーとなら、一緒にモノ作りがしていける」と確信したという。 1976年9月9日、ビクターは遂にVHS第一号機を発売。その後もVHSには各メーカーが独自に誇る技術が総動員され、次々と改良がなされていく。テープを前面から挿入するフロントローディングと呼ばれる機能はシャープが、スピードサーチ、いわゆる早送り機能は三菱が提供した。すべての情報を広く公開し、すべての技術者がその改良に関わる、これぞまさしくオープンソースの哲学であろう。この姿勢は海外に進出しても変わることなく、ビクターは欧州のトムソン、フィリップス、米ゼニスといった大手メーカーと次々契約。こうしてVHSはアメリカ、ヨーロッパの市場をも押さえ、発売から7年目の1983年、ベータを大逆転して世界規格へと登りつめるのである。 仕事をするとはどういうことか? 結局のところ、自分が他者に対して何を為しえるかということに尽きるのではないか。それは上司と部下という関係であれ、モノを作る側と消費者という関係でも同じだろう。我々は他者に何ごとかを為し、歓ばれ感謝される以外の方法で収入を得生きていくことは出来ない。高野鎮雄はその後日本ビクター副社長まで昇進するが90年に勇退。常任監査役に就任するものの2年後の92年、癌で逝去する。プロジェクトX『窓際族が〜』のエピローグには、高野の棺を乗せた車が想い出の横浜工場へと立ち寄る場面が使われている。社員全員が立ち並び、かつての上司を見送った。横断幕が掲げられ、そこには「ミスターVHS・高野鎮雄さん、ありがとうございました」と書かれていた。その日、彼らはどんな夜を過ごしたのだろう。たとえ涙を流したとしても、それは大切な人を亡くした悲しみであると同時に、感謝の気持ちであったに違いない。(了)
by tohramiki
| 2014-06-25 23:59
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