朝起きて、いつもは珈琲なのだが何故かココアが飲みたくなって一杯作ってみた。すると不意に、とても鮮やかに記憶がよみがえって来た。ちょうど一年前の今頃、僕は
『東京 手みやげ本(ぴあMOOK)』という本の取材に駆け廻っていた。そして取材先で、ずいぶんと甘いものをご馳走になったのだ。今朝の寒さとココアの甘さが相まって、その時期のことがリアルに想い出されたのだろう。常々思うのだけれど、人間の記憶というものは視覚によって導き出されるものもあれば匂いや味覚によって甦るものもあるが、どちらかと言えば匂いや味によるものの方が切なかったり、より懐かしい気がする。僕だけでしょうか? それはともかく、この仕事はコンビを組んで一緒に廻ることになった頼りになる相棒、カメラマンの
海老澤芳辰さんと知り合ったり、取材先で出会った人たちも皆、素敵で個性的な人ばかりだったのだが、今朝思い出したのは浅草の純喫茶
『アンヂェラス』、そこの店名と同じ名を持つケーキ「アンヂェラス」のことだった。
このお店は創業昭和21年、池波正太郎、手塚治虫といった昭和の文化人に愛された老舗である。創業者の甥で、名物ウエイターの澤田光義さんが、「終戦直後で食べ物のねぇ時代だろ」と粋な下町言葉で教えてくれた。「アンヂェラス」は元々、クリスマスに食べる切り株の形をしたケーキ、「ノエル(ブッシュ・ド・ノエル)」を摸したものだった。当時の子どもでクリスマス・ケーキを食べられるなんてよほどの大金持ちしかいない。そんな時、敬虔なクリスチャンだった創業者の奥さんが、「それでは子どもたちが可哀相」と考案した。だから上にリンクした〈ぐるなび〉の写真を見てもらえば判るように、「アンヂェラス」は小さくて可愛いケーキなのだ。値段も320円と安い。NHK朝の連ドラ『ごちそうさん』では、ヒロイン・め以子が戦時中の物のない時代でも工夫しておやつを作り、近所の子どもたちにふるまって「ごちそうさん」と呼ばれて慕われているわけだが、東京は浅草にも「ごちそうさん」がいたわけだ。
また、『アンヂェラス』は水出しの珈琲、ダッチコーヒー日本発祥の地でもある。特にブランデーの代わりに梅酒を入れる梅ダッチコーヒーが絶品だった。これは澤田さんが遊び心で作り、店に来る友人たちだけに振る舞っていた言わば裏メニューだったが、それを見た池波正太郎さんが「俺にも飲ませろよ」と言ったことから、一般のお客さんにも出すようになったらしい。場所は雷門から吾妻橋と反対方向へ、ふたすじ西。浅草へ行かれた際は立ち寄ってみてはいかがでしょう。中二階のある店内も実に昭和レトロで味わい深い。僕は「また行きたいなあ」と思いつつ、一年経ってもその機会がない。
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