新しい週の始まり。会社へ向かう中央線の中で小林信彦・著『夢の砦』、おそらく今回で7、8回目になるであろう再読をしていたら、以下のような文章に行き当たった。〈狭いテアトル三原橋は、満員で、煙草のけむりでむせかえらんばかりである。〉(新潮文庫版・上巻・199ページ)。続いて〈旧作二本立てで、これだけ観客が入るのは珍しい〉という説明があるから、これは封切館ではない。いわゆる「二番館」「三番館」、もしくは「名画座」と呼ばれる映画館でのことだ。主人公が観ているのは1956年公開の『狂った果実』。ご存知、石原裕次郎主演の太陽族映画である。もちろん原作は石原慎太郎(脚本も)、監督は中原康。この日記には何度か書いているけれど、僕は大学の4年間、上野にある日活ロマンポルノの封切り館でアルバイトをしていた(社名は途中から「にっかつ」に変わった)。こういう場末のピンク館では煙草を吸う人が時々いた。場内に「禁煙」という赤いランプは煌々と灯っていたが気にする人は皆無に近く、僕ら従業員も特に目くじら立てて注意もしなかった。70年代後半から80年代初頭にかけて、のことである。
しかし小説の中に出て来るのは一応、一般映画の小屋である。〈「狂った果実」を観るのは五年ぶりだった。〉とあるから舞台は1961年。この頃は満員の映画館の中で、観客が平然と煙草を吸っていたのだろうか。煙草に関する意識は本当に変わった。宮崎駿監督の『風立ちぬ』は、喫煙シーンが多く出て来るというだけで物議を醸していたっけ──? というようなことを書こうと思っていたのだが、こうしてキーボードを叩いているうちもっと気になることが出て来てしまった。「テアトル三原橋ってドコ?」ということです。調べてみると今の、と言うか、つい先日閉館した「銀座シネパトス」があったあのレトロな通路、あそこを「三原橋地下街」というのだそうだ。不覚にもまったく知らなかった、何度も通ったはずなのに。ところでその「銀座シネパトス」を舞台にした映画
『インターミッション』のHPによれば、〈昭和27年、埋め立て後の三原橋を活かして、フランク・ロイド・ライトに師事した昭和のモダン建築の旗手・土浦亀城のデザインによる「三原橋地下街」が完成。現在のシネパトス1の位置には、ニュース映画の専門館「テアトルニュース」が開館。〉とある。
つまり「テアトル三原橋」とは、「テアトルニュース」をモデルにして、小林信彦さんが創作した架空の映画館ということになるのだろうか。ところで宮崎駿監督の『風立ちぬ』にはラスト近く、主人公・二郎が、結核で寝込んでいる愛妻・菜穂子の手を握りながら、もう片方の手で飛行機の設計図を引くというシーンが出て来る。しかしヘヴィ・スモーカーの二郎は煙草が吸いたくなって、「煙草が吸いたい、手を離しちゃだめ?」と訊く。菜穂子は少し笑って「ダメ」と答える。宮崎監督はあのロマンチックな場面が描きたいがために、伏線として全編あんなにもしつこく喫煙シーンを入れたのではないか? と僕は思っているのですがどんなもんでしょう。
※「三原橋地下街」に関しては、ネット上に
〈地下鉄日比谷線の上に謎の映画館!?〉という、もう少し詳しい記述がありました。
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