今日も晴れ。どうやら今年の東京は空梅雨のようです。iPod Shuffleにはウエスト・ロード・ブルース・バンド、1975年地元京都会館で行われたライヴを収録した
『WEST ROAD LIVE IN KYOTO』を入れて走る。6月28日の日記にソー・バッド・レビューの『ライヴ!ソー・バッド・レヴュー』は残念ながらあまり音が良くないと書きましたが、2007年に紙ジャケット仕様で再発されたこのアルバムは、対照的にものすごくいい。僕は音質的なことはあまりよく判らない方だが──何しろこうしてMP3にダウンコンバートして聴いてるくらいだから──それでもギブソン335を使っているのだろう、シンチャンこと塩次伸二によるナチュラル・トーンの伸びやかなギターや、スネアとハイハットにジャズの匂いがする松本照夫のドラム、そしてステディでシンプルでありながら、所々驚くほど細かいリズムを入れ込んで来る小堀正のベースと、それぞれの音がまるで手に取るように感じられる。この時代日本で録られたライヴ録音の中でも、一二を競うほど音が綺麗なのではないだろうか。
綺麗と言えば演奏もまた同様。このライヴではもう一人のギタリスト・山岸潤史が抜け、代わりにピアノ(生ピアノの他にフェンダー・ローズとクラビネットも弾いている)の井出隆一とサックスの薩摩光ニが加わり、よりアーバン・ブルーズに近づいた端正な音作りがなされている。特にアナログ盤B面ラストに「ピアノの隆ちゃん(井出隆一)が女の子を対象に弾きます──」というMCに導かれて始まるインストゥルメンタル、オスカー・ピーターソンの「自由への讃歌〈Hymn To Freedom〉」に至っては、ニューヨークのスーパー・グループ、スタッフ(Stuff)の登場を予感させるような、都会の香りがする演奏である。そして何より、ヴォーカルの永井“ホトケ”隆。この時まだ25才だったわけだが、当時から本当に唄の上手い人だったんだよなあ、と改めて思う。その永井隆さんには『ドッグデイ・ブルース』という著書がある。1985年に少年社というあまり聞き慣れない出版社から出ていて、現在は残念ながら品切れらしく、Amazon.co.jpの中古価格ではけっこうな値段が付いている。
〈ミュージシャンじゃない、アーティストじゃない、オレはバンドマン。〉というサブタイトルの、言わば自伝的エッセイなのだが、あまり時系列に囚われず、思い付くままに書いていったという感があって本棚の奥から久しぶりに取り出してみたら、一気に最後まで読んでしまった。1972年五山送り火の元で行われたという京大「幻野祭」での野外コンサートの様子や、かつて西新宿にあったという「マガジン1/2」というライヴハウスで行われた、レイジー・キムやウィーピング・ハープ・セノウ(妹尾隆一郎)等との深夜のジャム・セッションには、やはりステージの上に立っている本人、バンドマンにしか書けない臨場感がある。特に大阪厚生年金ホールにて、B・Bキングの前座に抜擢された時のエピソードは圧巻だ。最近の永井ホトケさんはLeyonaやブルーズハープのKOTEZと
blues.the-butcher-590213というバンドをやっていて、ギターを弾きながら唄っている。YouTubeで観るだけれだけれど、ミック・ジャガーやラフィータフィー時代の清志郎さんのように、いかにもヴォーカリストが弾くギターといった感じでかっこいい。
※追記 6月28日の日記に『ソー・バッド・レヴュー/LIVE ! SOOO BAAD REVUE』のことを書いたら、この辺りの音に詳しい友人よりすぐ連絡があり、
紙ジャケット仕様のリマスター盤が、6月27日に発売されているものの現在何故か遅延中とのことです。