相変わらず夜明けと同時に一度は眼が覚めるのだが、寝ぼけたアタマでリビングまでふらふらと歩き、ソファーに倒れ込んで二度寝するという日々が続いている。しかし、6時半から7時くらいの間には必ず起きる。というのは、その時間になると必ず階下でピアノが鳴り出すからであります。弾き手には上手い人と下手な人がいる。上手い方はショパンなどを華麗に弾きこなす。下手な方は「♪カエルノ・ウタガ・キコエテ・クルヨ」みたいなのをポロポロやる。早朝に聞こえて来るのはそっち。エントランスで何度か挨拶を交わしたことがあるのだが、小学校就学前くらいに見える女の子と、手を引くお祖母さんらしき女性。だからお祖母さんといってもそれほどのお歳ではない。下手すると僕と同世代。
おそらく女の子は朝起きて歯を磨くなりなんなりして、朝ご飯を食べる前か、あるいは食べ終わって保育園か幼稚園に行く前、そのわずかな時間にちょっとでもピアノを弾きたいのだろう。お母さんなら「朝っぱらから近所迷惑だからやめなさい」とか注意するのだろうが、何せオバアチャンは孫に甘い(笑)。真上で寝ている僕としたら多少は「ウルセーな」と思わないことはないのだが、彼女のお母さんやお父さんらしき人の姿を一度として見たことがない。ひょっとして何か事情があって、お祖母ちゃんのとこに預けられてるのかな? なんて余計な想像をすると、「まあ、いいか」と耳を傾けたりしている。ただひとつ、気になることがないでもない。
というのは、おそらくピアノと言ってもデジタル・キーボードであろう。音が安っぽい。それは上手い方(→ショパンを弾きこなすお祖母ちゃん)も同じ。だから僕が珍しく起きていて、グレン・グールドやマルタ・アルゲリッチなんかを聴きながらストレッチなどしてる時は、正直邪魔でもある。しかしまあ、グランドピアノでガンガン弾かれても困るワケで、だから毎朝半分眠りながら聴いている。♪カエルノ・ウタガ・キコエテ・クルヨ、ケロケロケロケロ、クワッカッカ──。