夜、所用があり駅まで出かけその帰り道、通りを歩いていると、本屋さんだったお店が、何か業務用器機の販売店のようなものに変わっているのに気づいた。そこは法政大学の工学部や理工学部が近くにあるので、この不況でも潰れることはないだろうと思っていたのだが。僕自身、本の8割方をAmazon.co.jpで買っている身で言うのは勝手な話だが、やはり淋しい。人は書店に何を求めるのだろう。個人的にはこうして夜の道を一人歩く時、深夜だからもう店は閉まっているのだが、常夜灯に照らされた新刊本の平台が、ひっそりとウインドウ越しに見えるだけで何となくホッとした。
こう忙しいと、特に本屋さんに行きたくなる。古本屋さんとは違う、かすかなインクの匂いなのだろうか、あの空気に包まれて、特に何を買うわけではないのだが、数十分ぼんやりしたいと思う。片岡 義男さんに
『ブックストアで待ちあわせ』というエッセイがあるけれど、昔よく女の子と渋谷の紀伊国屋で待ち合わせをした。「じゃあ文庫の早川書房の棚の辺りにいるわね」なんて、彼女はよく言っていた。それにしてもこの片岡さんの書籍、鈴木英人さんの装画がいいなあ。