朝いちばんでジムへ。昨日に続き、風は北から吹いているが、陽射しは暖かい。坂本龍一『Beauty』所収の、
「安里屋ユンタ」を聴きながら歩く。この古い八重山民謡を初めて聴いたのは、僕らヤマトンチュの70年代の子供は、細野晴臣1978年のアルバム
『はらいそ』だという人が多いのではないだろうか。歌詞、メロディは同じながら、印象はかなり違う。細野さんはポップスからマーティン・デニーのエキゾチック・ミュージックを経由し、久保田真琴が喜納昌吉の「ハイサイおじさん」をカバーしたこと等もあり、この曲に辿り着いたのだろうし、逆に教授は現代音楽経由、民族音楽研究から──と言った理屈は付けられるのだけど、聴いていると何かもっと、二人の根本的な音楽性の違いという気もする。
そう言った決定的に「違う」二人が出会い、さらに幸宏さんという圧倒的な個性が融合したわけだから、やはりYMOというのはとてつもないグループだったのだなあと、つくづくと思う。ちなみに『はらいそ』には教授も幸宏さんも参加していて、それがYMO結成のきっかけになったというのは有名な話。それはともかく──僕は恥ずかしながら未だ沖縄に一度も行ったことがない。昔々、『ボディプレス』というヌードグラビア誌を作っていたことがあった。25才から27才にかけての頃だ。エロ本らしからぬケッタイなものだということで、案外評判になった。けれど、2年作ってみて「もうやるべきことはすべてやったから」とやめてしまった。
こういうことは、常識的にはありえない。雑誌というのはある程度売れていれば続けるものだ。「やめたいんですけど」と言った部下に、ひと言「うん、いいよ」と返した僕のボス、中沢慎一(現・コアマガジン代表取締役)という人もすごかったとは思うけれど、そういうのはあまり世間の人は理解してくれない。なので「どうしてやめるんですか?」と次々訊かれ、面倒なので「郷里の沖縄に帰って実家のジャズ喫茶を継ぐことになりました」とバカバカしい嘘をついていた。若気の至りというか、皆さんすみませんでした。沖縄には「平良さん」とか「高良さん」という名前が多く、「トーラさんも沖縄出身ですか」とよく言われていたからだ。だから勝手に、沖縄は自分の故郷という気がしている。
なので、一度は訪ねてみたいと思っているのだけれど、1年365日、まともに1日も休めず、スーパーで1袋135円のピーマンを買おうか買うまいか沈思熟考しているような状態ではとても無理であります。けれど今年の夏、実は〈men's now〉でやらせてもらってる「店舗探訪」という連載で、沖縄北谷にある「東京書店北谷店」というところに取材に行かせてもらえそうになった。残念ながら実現はしなかったのだけど、まあ、いつかと期待してます。ところでWikipediaによると「安里屋ユンタ」は、「琉球王国時代の竹富島に実在した絶世の美女・安里屋クヤマと、王府より八重山に派遣され彼女に一目惚れした目差主(下級役人)のやり取りを面白おかしく描いた」内容とのこと。各コーラスの最後「マタハリヌ チンダラ カヌシャマヨ」は、「また逢いましょう、美しき人よ」という意味だそうです。ああ、いい歌だなあ。