本日も日がな一日原稿書き。夜の10時過ぎまで。お風呂に入り、11時よりNHK・Eテレ
『スコラ/音楽の学校 坂本龍一』を観る。何故珍しくリアルタイムかというと、裏で『IPPON グランプリ』をHDD録画していたからです。ともあれ、この番組も毎週楽しみです。高校生相手にワークショップをしながら、作曲や音楽の神髄を学んでいくという内容。ピアノを弾きながら解説していく教授もカッコいいのだが、浅田彰さんに音楽学者の岡田暁生氏、詩人で文化批評家の小沼純一氏による歴史的背景の説明が、いつも圧倒的に面白い。高校生達が毎回眼を輝かせて聞いている。こういう先生達に教えてもらったら、勉強面白いだろうなー、と思う。
今回のテーマは「ベートーヴェン 対立し和解する音楽」だったが、小沼先生による「肖像画を見れば判るけれど、ハイドンやモーツアルトは当時の風習であった綺麗にカールした髪のかつらを被ってのに対し、ベートーヴェンはそれを嫌がり、あの振り乱した髪で描かれた。それが彼の闘争への意思なんです」というようなお話。岡田先生からは「あのハイドンでも食事は召使い達と一緒にとったそうだが、ベートーヴェンは貴族の婦人から『食事中演奏してください』と言われても、気が向かなければ断固拒否した」というようなエピソードが語られ、「うむむ、そうなのか、そうだったのか!」とテレビの前で深く頷いてしまうんである。
特に、音楽には〈解決する〉という用語がある。不安定な和音から安定した響きに落ち着くことだそうだが、浅田彰さんによれば、ベートーヴェンの交響曲は主題がすべて単純なのだけど、不安定と解決を繰り返すので、強烈なパワーで前へ前へと進んでいく。それが長い楽曲を人々に飽きさせずスリリングに聴かせているのだとのこと。まさに「音楽とは時間の芸術」。しかし──浅田彰という人は経済学者でありながら、ご存じ『構造と力』で知られるように、フランス現代思想の第一人者。尚かつ同時に、文芸評論の分野でもすごい仕事をする人だ。つまり、上記の発言なんかはまんま長編小説にも当てはまるわけで、うーん、モノカキの端くれとして本当に勉強になります。来週は「ドビュッシー、サティ、ラヴェル編〜第1回・民族音楽との出会い」だとか。楽しみだなあ。