NHK朝の連続ドラマ『カーネーション』にハマッております。正直なところ、僕の中では『てっぱん』も『おひさま』も、『ゲゲゲの女房』を今ひとつ越えてくれなかった。しかしこれは半年間、一週たりとも見逃せないないという気がしております。ご覧になっていない方のために書いておくと、ファッションデザイナー、コシノヒロコ・ジュンコ・ミチコの3姉妹を育て上げた、小篠綾子さんの生涯が描かれる物語。舞台はだんじり祭で知られる大阪岸和田。ヒロインの小原糸子は男勝りなおてんばだが、時代は昭和初期、何をするにも「女のくせに」「女は女らしく」と押さえつけられていく。
今週土曜日は、幼なじみ「ヘタレの勘助」が二人の同級生にイジメられてるところを助けようとするが、子供時代ならまだしも、旧制中学の生徒に相手に女学生の糸子が勝てるはずもなく、お腹を蹴られて悔し涙にくれるという展開だった。正司照枝演じるお祖母ちゃんに、布団を被りながら「口惜しいんや」と泣く場面では、コチラも仕事終わりで軽くビールなんぞ飲んでいたから、「わかるで、オッチャンは判る。オッチャンだけは糸ちゃんの味方やでぇ」とテレビに向かってホロホロもらい泣きしてしまった(涙)。コレはアレですね、かつて小林綾子ちゃんの『おしん』が放映された時、「おしんに食べさせて!」とNHKに米を送った人がいたらしいが、ワタクシもその域に達してますな。
このドラマ、何と言ってもシナリオとキャスティングが絶妙。ヒロインを演じる尾野真千子もいいし、商い下手なくせに内弁慶で家族には威張り散らす、呉服屋主人・小林薫のお父さんもいい。そしてお嬢様育ちで天然なお母さん、麻生祐未も可愛いけれど、やはり最も味があるのが、上にも書いた正司照枝師匠だ。この人はかしまし娘の中でも一番の人気者だったし、その後は藤山寛美座長時代の松竹新喜劇に客演してたというから、まあ当然と言えば当然なのだが、1934年生まれで現在77才。今だ若いし美しい。基本は三枚目なのだが品がある。磯野貴理子の元姑という知られ方だけでは、あまりにもったいない。
それにしても関西のベテランの芸人さんは、まず存在感からしてすごいのは何故だろう。かつて何処かのハウスメーカーのCMで、夢路いとし師匠演じる老父が、古い家を解体するところをそっとカメラに収めるというのがあったけれど、わずかワンカットでその人生すべてが滲み出してしまうような味わいがあった。北野武監督作『ソナチネ』に於ける、チャンバラトリオの頭こと、南方英二演じる殺し屋もそうでしたね。あれは確か台詞が一切なかったはず。それはともかくとして、『カーネーション』はHDDレコーダーにしっかり「月〜土」予約して、毎晩観ていく所存でござりまする。