3時半、起床。夜が明けるまで原稿を書き、6時よりjogに出る。124分。戻ってストレッチやアイシングをしてから入浴。このところ、お風呂の中では坂本龍一
『音楽は自由にする』(新潮社)を読んでいる。語り下ろしの自伝。とにかく全編面白いのだけど、まずは若き日の教授が、友部正人を始めとする、フォークやロックのミュージシャンと出会っていく辺りがまず興味深い。その中に山下達郎がいる。『レコード・コレクターズ』誌2006年4月号所収、「特集・ナイアガラ・トライアングル」大滝詠一・山下達郎の対談の中には、「坂本くんは長門くんが連れて来た。西荻ロフトで友部正人のバックでピアノを弾いてるところを声をかけたらしい」という達郎さんの発言がある。
長門くんとは長門芳郎氏のこと。シュガーベイブのマネージャーで、後に南青山で「パイド・パイパー・ハウス」という、圧倒的に趣味の良い輸入レコード店を開く。僕なんかも大学がすぐ側だったこともあり、このお店には本当にお世話になった。情報の無い時代、新しい音楽を探す場はレコード屋さんかロック喫茶、そして数少ない音楽雑誌しかなかった。それはともかく──坂本青年は山下達郎に出会い、その高度で繊細なハーモニー作りに驚愕する。そして、何しろ教授は小学生の頃からピアノと作曲を学び、芸大の音楽科の大学院に通っていた。だから「当然、山下くんもそういう教育を受けた来た人だと思ってたら全然違った。彼はアメリカン・ポップスを聴き漁り、その中から独学で学んでいたんです」と語る。
二人はすっかり意気投合し、行動を共にするようになる。上記対談で、達郎さんも「僕と坂本くんは一時期一番の友達だった。YMOが始まるまでは毎日のように一緒にいた記憶がある」と発言している。ここにあるのは、才能溢れる若者二人の、果てしない音楽への愛の深さだ。だからお互いに対し、純粋なリスペクトの気持ちを持てる。夜になって何気なくテレビを点けると、NHK『クローズアップ現代』でスティーブ・ジョブズの特集をやっていた。ソフトバンクの孫正義さんが出ていて、「スティーブにはユーザーへの崇高なまでのリスペクトがあった」と言っていた。「お客さんへの尊敬の念があったから、商品の隅々にまでこだわり抜き、それは芸術の域まで達したのだ」と。