えー、個人的に、極めて個人的にですが、「コレって世の中に要る?」と思うものがあります。例えば缶コーヒー。僕は無類の珈琲好きで、冬場は1日10杯近く、夏でも4、5杯は飲みます。が、しかし──アレを缶に入れて冷やしたり、「あたたか〜い」くする必要は何も無いと思う。そもそも珈琲というもの、ただ冷たくしたってあまり美味しいものでは、ない。だからスターバックスのラテだとかカフェモカだとか、フラペチーノですか? あーゆーのは好き。大歓迎。オゴってもらえるならいつでもいただきます。でも、いわゆる喫茶店のアイスコーヒー、関西ではレイコー、好んで飲みたいとは思わないですね。
それはともかく、缶コーヒーです。時々出版社等にお邪魔した時、「お茶か珈琲、どちらがよろしいですか?」なんて訊かれる。「んー、じゃ、珈琲で」とお願いし、待っているとテーブルに何かがトンッと置かれる。見ると缶コーヒー。あれねー、不味くはないです。ただ、温かいドリップ珈琲を想像してると少しガッカリする。しかしマア、それはイイです。問題なのはインスタントコーヒーだ。ありゃ何です? インスタントとおっしゃいますがね、例えば豆からミルで挽いたとしても、ペーパーフィルターでドリップすれば所要時間はどのくらいでありましょうや。ものの5分もかからないでしょう。にも関わらず、何ンでまたフリーズドライやらなんやらの技術を駆使してまで、粉末にしてお湯に溶いて飲まにゃならんのか。僕は解せません。
そして、ココが重要なのだが、インスタントコーヒーというヤツ、珈琲豆より高いんです。僕はMAXIMのエスプレッソローストというものを愛飲しとりますが、これが安くて180gで258円。小さじ2杯でかなり濃いのがいただけますので、1袋で20杯以上イケるのではないか。で、今Amazon.co.jpのサイトで調べてみたら、キーコーヒーのインスタント・プレミアムブレンドというやつは100gで368円する。ネスカフェ・プレジデントに至っては90gで1,201円ですよ。いったい誰が飲むんだ!(飲む人がいるから売ってるんでしょうが) さて、本日何故このようなことをつらつら書き連ねたかと申しますとですね。我が家の台所の戸棚、一番高い位置の最も手の届きにくいところ。つまりどのお宅にもあるであろう不要物しまい込みゾーンの秘境にですね、ずいぶん前からそのネスカフェ・プレジデント90g入り瓶5本セット(スティック・コーヒーシュガー付き)が鎮座しているワケです。
もう、あまりに昔の話なので忘れてしまったが、何処かの版元さんがお中元かお歳暮にくださったものです。こう書いただけで、業界の皆さまはどれたけ過去のお話か判りますよね。そう、出版社が一介のフリーライターにこんな高い贈答品をくれるくらい、景気の良かった頃の遺物であります(涙)。これねー、困ってたんですよ。捨てるにしても中身を出し、瓶は再生ゴミ、フタの部分はプラスチックゴミに分別して出さなきゃならない。ちなみにプラスチック類は有料です。だいいち、食べ物飲み物というのは、どうも捨てるに忍びない。ところがです、昨日「さてとどうしたものか」と何気なく開封してみて閃いた。さすがネスカフェ・プレジデント、味はどうか知らないが、香りは良い。そこで、小鉢に空けて台所のシンク、生ゴミカゴにパラパラと振りかけてみた。
するとどうでしょう? この猛暑でアッという間に腐り始める生ゴミの、ヤな臭いが消えた。ふむ。今度は小鉢に空け、シンク下、冷蔵庫の中、下駄箱と次々いれてみた。すると臭いが消えるだけでなく、開ける度にほのかな珈琲の香りが漂う。そう、役に立ちました貰い物のインスタントコーヒー。すまぬ、オレが間違っていた。世の中に必要だった。皆さまも是非一度お試しください──って、不要なネスカフェ・プレジデント詰め合わせセットがあるご家庭は、我が家以外ないですね。きっと。