今朝も、4時頃から7時過ぎくらいまでは眠れた。ほんの少しだけれど、調子は上向いて来たかもしれない。ごそごそと起き出し、しばらく仕事をして、さて朝飯でも食うかとリビングへ行き、テレビを点けると
『ぶらり途中下車の旅』をやっていた。旅人は舞の海さんだ。しかし、「あれ、声が違う」と気づいた時、〈ナレーター・林家たい平〉と出る。そうだった、滝口順平さん、亡くなったんだよな、と思い出す。この番組は、一時期本当によく観ていた。週末の楽しみだった。90年代の後半、まだ30分枠だった頃。当時はHDDじゃなくビデオだったが、録画しておいて、夜に相棒のぎじゅ太を抱きながら観た。
あの頃、僕は自分がひどく孤独だと感じていた。友達はいなくて、心を通じ合わせるのはネコしかいなかった。文章を書かせて貰える場が少なく、デザインの仕事で食いつないでいた。『ぶらり途中下車の旅』は最後、旅人がその日に乗った電車は走る場面があり、主題歌が流れクレジット・タイトルが出る。その中に、当時僕が好きだったひとと、同じ名前の女性スタッフがいた。好きだというだけでどうしようもなく、単に名前が同じだけなのだが、そのテロップを見るたび切なくなった。30代の後半、夜中に背中の方から擦り切れる音が聞こえるように、自分が歳を取っていくのを実感していた。
今日も思ったけれど、やはりこのラストが好きだ。ささやかな出会いがあり、小さな発見があり、心躍る風景があって──特にいいのは、演出なのだろうが、途中旅人が気になるお店を発見して、でも店主に「開店は夕方からなんですよね」なんて言われる。「そうか残念だなあ」と言いつつ一旦はその場を離れるのだが、番組が後半になり陽が傾いた時、彼はその店のことを思い出す。ナレーターの滝口さんが例の口調で「あらあら、何処行くの?」なんて言ってカメラが着いていくと、件の店で旅人がお酒をお供に食事をするシーンとなる。そこへ、主題歌が流れ、電車が走るカットが重ねられる。人生は色々ある。歓びも哀しみも。けれど、列車は明日も走っていく──。小さな旅に出たいですね。