きむち君が亡くなってしまった。体重10キロもある、大きなキジトラの男の子。飼い主さんのweb日記によれば、此処数日体調が悪く入退院の日々だった。ごはんを食べようとせず、食べても吐いてしまうのを繰り返した。ネコというのは食事を摂らないと、体内の脂肪から糖分を得ようとして、その際大量の脂肪が肝臓に溜まり、脂肪肝になってしまうのだそうだ。これは我が家の相棒、みャ太の時も同じだった。4年前、そのみャ太と弟・ぎじゅ太を主人公にした『猫の神様』という本を出版したことがきっかけとなり、全国にいわゆるネコ友さんがたくさん出来た。そして以来、どれだけの子達が虹の橋に旅立ったという知らせを受けてきただろう。
それにしてもほとんどの方が、一度もお会いしたことのない飼い主さんである。ゆえに、本ネコ(本にゃん)にも当然面識はない。けれど皆さんがメールで送って下さる写真、ブログやmixi日記にアップされる愛情に溢れた表情、そして文章で綴られる何気ないエピソードにどれだけ癒され、何度笑顔をもらったことだろう。きむち君はそれほど大きいにも関わらず甘えん坊で、飼い主さんのお腹の上に乗るのが大好きだったという。彼には同じ日、同じ母猫から生まれたみるくちゃんという妹がいて、この子も女の子にして大きな5キロ超。二匹が競って乗って来る──そんな様子をいつも楽しみに読ませて貰っていた。
動物を愛さない人には理解出来ないだろうが、共に暮らすペットとは息子であり娘であり、幼い妹であり弟である。それが自分より先に死ぬのは、最初から判っていたこととは言え、身を切られるより辛く悲しい。けれどその見送りに際し、飼い主から出るのは感謝の言葉だけだ。一緒に居てくれてありがとう、うちの子になってくれてありがとう、たくさん笑顔をくれてありがとう、と。我々も出来うるならば、そんな存在になれないものか。ご存じのようにネコというのはな〜んの努力もしない。ただご飯を食べ陽だまりに寝転び、ゴロゴロと喉を鳴らすだけだ。人間も、ただ存在するだけで「ありがとう」と言われたい、相手には「一緒にいてくれるだけでいいんだよ」と、それだけを伝えて生きていたいものだ。ネコから学ぶことは、星の数より多い。どうぞ安らかに眠ってください。