やはり4時に眼が覚める。ストレッチを念入りにやって身体を起こし、シットアップを終えてもまだ外は暗い。iMacに向かい、少しだけ仕事を進め、夜明けを待ってjogに出る。6時15分。すっかり朝にはなっているが、太陽はまだ昇らない。地面に陽射しが当たり始めるのは7時10分前くらい。今日は今期初めて手袋をして走った。100円ショップで買ったカラー軍手。僕は真冬でも外出する時はかなりの薄着で、人から「それで寒くないんですか?」と言われたりもするのだが、そのぶん手足の冷たさに弱い。だから毎年「今年こそはしっかりした防寒暴風の手袋を買おう」と思いつつ、安い軍手で済ましている。
Amazon.co.jp に
「ゴールドウイン・防風透湿・ウインドブロック インナーグローブ」というのがあって、インナーだから本来は登山用とかで、この上にゴアテックスの手袋をさらにするのだろうが、ジョギングに使うなら良いのかなと思いつつ、やはり実物を見ない限りは・・・と迷っている。ところで、あれは何ていう題名なんだろうか、子ギツネが手袋を買いに行く童話ありますよね。知りませんか? こんなお話。とある山深く、キツネの母子が住んでいる。確かお父さんキツネはいなかったと思う。冬でしんしんと雪が降り積もり、子ギツネの小さな手はあかぎれだらけになってしまう。
子ギツネが「お母さん、おててが冷たいよう」と訴えると、母キツネは「それでは里に下りて手袋を買っていらっしゃい」と言う。でもキツネが人間のお店にいくわけにはいかないから、魔法で子ギツネの手、その片方だけを人間の手に変えてしまう。要するにキツネが人を化かすわけだ。このお話、本当に好きなんですよね。確か村上春樹さんも短編の中で引用していたと思う。それもまたどの小説集に入っていたのか、タイトルも内容も忘れてしまったのだが、「ああ、春樹さんもきっとこの話が好きなんだなあ」と、ファンとしては嬉しくなった。
で、子ギツネは片方だけ人間の手で、ひとり(一匹?)山を降り、人里へと向かう。初めてのお使いである。里に着くともう夜は更けているから、手袋を売る店は閉まっている。そこでトントンと扉を叩く。「はい、何のご用?」と中から店の人間の声がする。ココが好きなんですね。子ギツネは言う、「手袋くださいな」。何とも可愛いじゃないですか? そしてお母さんの言いつけ通り、お店のおじさんに少しだけ、キツネだと悟られないようほんの少しだけ戸を開けて貰って、そこに魔法で変えて貰った方の、人間の手を差し入れるのである。「この手に合う、手袋くださいな」。
その後どうなるんだっけ? おそらく無事に手袋を買うことが出来て、子ギツネは山へと帰り、お母さんキツネに「よくお使いが出来ましたね」と誉められ、アタマを撫でられ抱っこされて、暖かい手で幸せに眠る。めでたしめでたし、となるのだろう。でも、僕が良く憶えているのは手袋を買うシーンだけだ。子供の頃読んだ絵本には、挿絵があったはずだ。雪の降り積む店の軒先に、小さなキツネが立っている。戸がわずかに開いて、そこから灯りが洩れている。一筋の光になって、雪の上を細く照らしている。子ギツネの声がする、「手袋くださいな」。雪はしんしんと降っている。