9月19日、23日に佐藤忠男さんの評論集『大島渚の世界』(筑摩書房)のことを書いたが、おそらく20年以上ぶりにパラパラとめくったらこれがやはり圧倒的に面白く、朝日文庫版もAmazon.co.jp マーケットプレイス(中古市場)で買い求めた。というのは、何しろ単行本は1973年発行であり、作品論は『夏の妹』で終わっている。けれど文庫は1987年の作。『愛のコリーダ』から『マックス、モン・アムール』までが網羅され、『戦場のメリークリスマス』に於いては佐藤氏による大島監督へのインタビューまでが収められている。
佐藤忠男による映画評論は何処が凄いのか? それは「映画を観る」という行為、その快楽に付きまとう「無意識」というものを、的確かつダイナミックに文章化していることだ。我々は何気なく「面白かった」「良い映画だった」「感動した」と口にする。友達同士で言い合う、「アレ、良いよね」「私も好き!」と。けれどその実、いったいその映画のどの部分がどのように、自身の心を揺さぶったのかは理解出来ていない。言語化出来ていない。そこをあたかも「貴方が痒かったのは背中のこの部分でしょう」と手を伸ばしてくれるが如くである。
文庫版
『大島渚の世界』(朝日新聞社)は昨日届いた。本日早速、jog終わりのお風呂の中で読もうと中を開くと、栞代わりにしていたのだろう、映画のチケットが一枚ハラリと落ちた。有楽町朝日ホールで上映された特集「いま、ジャン・ルノワール」。いつ頃のものかは判らない。ただ、奇しくも9月27日から30日まで。作品は『どん底』『ゲームの規則』『フレンチ・カンカン』他。何年か前のちょうど今頃、何処かの映画青年もしくは映画少女がこの文庫本を持ち、上映前のロビーでひっそりと読んでいた──その姿を想像すると、それこそ映画のワンシーンのようだ。読書の秋、芸術の秋。