5時半起床。昨夜寝たのが3時だから、睡眠時間はかなりキビシイ。しかし今日は午後から取材があるので、何とか午前中に1本原稿を仕上げなければならない。何とかめどがつきかけた11時過ぎ、『ビデオメイトDX』のマツヘン(マツザワ編集長の略)よりTEL。「どお?」と言うので「1本目はもうすぐ」と答える。この雑誌では2本連載をやらせて貰っている。「もう1本の方はまだキャプチャー(画面撮りのこと)もしてないよね?」と訊く。そう、この連載は両方とも写真選びからデザインまで担当しているので、かなり頑張っても1本丸1日はゆうにかかる。
「今日中にもう1本は無理かなあ?」とマツヘン。うーむ、どうやらまたもや僕の皮算用が1日甘かったらしい。「実はこれから取材なんだよ」と僕。それに対して「明日の昼がギリだなあ」とのこと。「わかった。今日帰って来てから夜中までキャプチャーとデザインをやって、明日早朝から書けば何とかなるよ」と僕。そう言いつつ、心の中では「うー、うー、今夜もあまり眠れないのかあ」と考えている。うー、うー(涙)。
午後1時に家を出る。ご飯を作っている時間ももったいないので、お昼は外食にした。駅に向かう途中の街道沿いに松屋がある。しかしこんな慌ただしい予定の中でも、今日のような気持ちの良い秋の午後、郊外にあるメシ屋で昼ご飯を食べるのは楽しい。特にココの松屋はドライブイン風な作りで、テーブル席があり窓も広い。そこから紅葉の街路樹を眺めると、ああ、この街に住んでて良かったなあと思う。時刻は1時半、このゆったりとした時間帯も良い。客の誰もが穏やかにメシを食っている。僕も含め全員が中年の男だ。
東海林さだおさんがかつて、「牛丼屋には女にモテない面々が集まる」という名文を書かれていたが、確かに石田純一や武田修宏風はいない(涙)。サエない背広(スーツではない)の営業マン風、近所に工場があるので、「たまには社員食堂以外で食ってみっか」的作業服の人、などなど。しかし逆に言えば実直なオトーサン。真面目、質素、清貧。日本の経済ワシラが支えてますというオジサン達とも言える。女にモテなくて悪いか、モテなくて文句あっか! である。特に僕の右ハス前のカウンターに座っていたオヤジ(推定60才)がイイ味出してましたね。
俳優の綿引勝彦氏に似た風貌で、ハゲあがった短髪に無理矢理パンチパーマをあてている。この季節に半袖! そこから覗く二の腕の筋肉は盛り上がり、左手で牛めし特盛りのドンブリを下からガシッと握りしめ一気に食らい込んでいる。そう、このオヤジは食事のスタートからゴールまで一切丼をテーブルに置かないのだ。おお、これぞ椎名誠サンが提唱した「日本の正しいドンブリ物の食い方」ではないか! 僕が前々から一度食べたかった松屋の新メニュー「豚と茄子の辛味噌炒め定食・580円也」を食べ終わり外に出ると、綿引オヤジ氏は、その太い二の腕でハンドルをぐるんぐるんと廻し、建設現場の足場を満載したトラックを切り返して街道へと出てゆくところてあった。