6時に眼が覚めると、頭が割れるように痛い。まいった。今日は午後から取材だ。そう思ってフトンを被って二度寝すると、気温が上がっていくのに伴って、恐ろしいほどの寝汗をかく。自分の背中から、不快な液体がどんどん溢れ出て、敷き布団を濡らしていくのが判る。フトンを干すヒマなんてないし、だいいち外は雨だ。今日は戻ってへとへとの身体のまま、この湿気た布に横たえるのかと思うとうんざりする。
ハッとして起きるとすでに12時15分。マズイ、1時には家を出ないと。しかし、大汗をかいたおかげでスッキリしてる。歩くと多少こめかみに響くだけだ。オレはツイてる。昨日書けなかったこの日記──と言ってもたった4行だが──を慌てて書き、さっとシャワーを浴び家を飛び出す。午後2時、下北沢。ツイてる、と言えば、今日が毎月恒例の、太賀麻郎くんの取材だったのもラッキーだった。いつもの編集Aくん、Tくんも一緒。
麻郎ちゃんとしゃべっていると元気になる。小学生の娘二人をシングルファーザーで育て、自身は糖尿病と結核という病気を抱えながら、仕事も減って生活は大変だと思う。でも麻郎ちゃんは飄々としている。「俺も落ちぶれたなー」「昔は加藤鷹より人気あったんだぜー」と軽口を叩きながら煙草を吹かす。何より、この人はいつだってカッコイイ。決して無理はしてないだろうが、常に格好良くあろうとしているんだと思う。女性がオバサンになっても綺麗でいようと心懸けるように、男もオヤジになっても格好つけなくちゃと、彼と会ってるとつくづく思う。
Aくん、Tくんも楽しそうだ。そもそも単なる取材ならば、ライターの僕だけ話を聞けばいいのだ。しかし毎回二人ともついて来てくれるということは、月一回麻郎ちゃんとこうして話すのを楽しみにしているのだろう。『オレンジナビEX』(東京三世社)にて好評連載中、「放蕩息子の帰還。〜太賀麻郎物語」、どうぞよろしく。世界に愛と平和を、AV業界の人は太賀麻郎に仕事を!
と、好調だったのだが、やはり夕方になると微熱が出たようだ。6時半過ぎ、帰りの井の頭線に乗っていると咳が出る。コンコンと出る。すると、前に立っている女性がそのたびに振り返る。「あれまこのシトは・・・」という眼で僕を見る。「今流行りの新型インフルなんじゃないかしら?」、そう思われてると思うと、どんどん喉が痒くなって来る。咳というのは不思議なもので、我慢しなくとちゃと思うと出る。コンコンと出る。そのたび、女性はチラチラと僕を見る。まいった。