8時に起き、「さて、仕事をしなくては」と思いつつリビングのソファーで横になってしまう。此処しばらく暑くて寝苦しかったが、今日は一転して涼しい。うとうとしていると、外からサラサラサラという心地良い音が聞こえてくる。眠りの世界を行きつ戻りつしていてやっと、「ああ、雨の音なんだ」と気づく。そう言えばずいぶん長い間、雨の日がなかった。excite.ポータルの天気予報には、ずっと乾燥注意報が出ていたはずだ。まあ世の中は連休なのだから、今日はもう少し寝ていようと決める。乾いた土に雨が染み込むように、眠りがゆっくりと頭の裏側から忍び込んで来る。とてもリアルな夢を見る。僕が現実世界で寝ているソファーの、頭の向こう側はベランダなのだが、夢の中では部屋になっていて、壁越しに若い女数名がひそひそ話している声がする。
夢の中でも僕は半分眠っているのだが、次第に彼女達は女優で、映画の出番待ちをしているということが判って来る。「今日はもう撮影ないわね」と一人が言い、「この雨ではね」と誰かが言う。やがてドアが開き、TVで時々顔は見かけるけれど名前は知らないグラビア・アイドルの娘が顔を出す。「ねえ、このサングラス、あなたのよね」彼女はそう言ってこちらに放り投げた。手に取ると確かに僕のものなのだが、レンズと両側のツルを繋ぐねじが外れている。閉まろうとするドアに「ねじは?」と問いかけた──その自分の声で眼が覚めた。手の中にサングラスは無かったが、それは確かに15、6年前まで気に入ってかけていたものだった。