グレッグ・オールマンが亡くなった。死因は肝臓ガン、享年69。長らくC型肝炎で闘病し、2010年には肝臓移植手術を受けて成功したと伝えられた。けれど昨年から3回にわたって、予定していたツアーをキャンセルしたという。もう一度ステージに立ちたかったんだろうな、無念だったに違いない。気の毒に、と思う。僕がロックを聴き始めて、すぐに兄のデュアン・オールマンはオートバイ事故で死んでしまったから、僕らの世代にとってはグレッグこそがオールマン・ブラザーズ・バンドの象徴だった。
1991年に新宿の厚生年金会館でオールマンズを観た。今となると貴重な経験になってしまった。当時はディッキー・ベッツがフロントに立ち、もう一人のギタリスト、ウォーレン・ヘインズが後方からバンドをまとめているような感じだった。だからグレッグはコンサート全般を通じて、正直あまり元気そうには見えなかったのだが、それでもグレッグこそがオールマン・ブラザーズ・バンド! そう感じるシーンが冒頭からあった。暗転の中、袖からメンバーが登場して楽器を手にする段階で、すでに客席は総立ちになっていた。
そんな中、誰かが「グレッグ、ウイ・ラヴ・ユー!」と叫んだ。するとハモンドB3を前に座ったグレッグはひと言、あのしわがれた声でボソッと「ミー・トゥー」と答えたのだ。そしてカウントがあり、名盤『フィルモア・イースト・ライヴ〈At Fillmore East〉』(1971年)と同じ一曲目、「ステイツボロ・ブルース〈Statesboro Blues〉」が始まった。鳥肌の立つ一瞬だった。デュアンが亡くなったのは同アルバムが出た年1971年だから、兄弟は46年間も離れ離れだったことになる。そして今、天国で再会を果たした。R.I.P。
※YouTubeは1982年のライヴより「Statesboro Blues」。夕陽に輝くグレッグの長い金髪が美しい。