午後から外出。国立で取材。我が家の最寄り駅・国分寺からはわずか2駅だが、都心方向と反対なのでほとんど訪れることはない。何年ぶりだろう? 20代の後半、アダルト誌の編集長をやっていたとき、表紙のアートディレクションと本文の半分以上を手がけていたMというデザイナーが住んでいたので、当時は最低でも月に一度は来ていた。メール入稿など影も形もない時代である。「才能がある」というような言葉ではとても言い表せない、唯一無比の精彩を放つ仕事をする男だったが、その後いくつかの事情が重なりデザイナーを辞めてしまった。1990年代初めの頃のことである。
それからしばらくしてある人から、「君が編集者を辞めなければ、Mもデザイナーを辞めずに済んだはずだ」と言われた。物書きになってからも、自著の装幀などで数々の素晴らしいブックデザイナーさんと出会った。Mの才能がそれ以上だったとは言わないが、Mほど僕の感性・嗜好に合いながらも、常にいい意味で毎回裏切り、驚かせてくれるデザイナーはいなかった。これからも現れないかもしれない。だから確かに僕が編集者のままでいたら、Mが辞めると言い出したとき、「よせよ、お前がいなきゃ俺は本が作れないぜ」と訴えたはずだ。人生に「もしも」はないというが、後悔はある。
※写真は今日の国立。大学通りの、東側から西側を写す。美しい季節ということもあるが、とても日本とは思えない。ヨーロッパあたりの学園都市のようだ。data:iPhone6 #Instagram #MOLDIV #X-PRO