ジョギングを終えて部屋に戻ると午前11時ちょうど。ストレッチをしながらテレビを点けるとお昼の情報番組『ひるおび』が始まったところ。阿藤快さんの笑顔の写真がど〜んと出たので、TBSでまた新しい旅番組でもやるのかと思っていたら、スタジオの画面になるとMCの恵俊彰さんも江藤愛アナウンサーも妙に暗い顔をしている。まさか、と思ったがやはり訃報であった。あんな大柄で元気のいい人が死んでしまうとは。僕が阿藤海(かつての芸名)という俳優を知ったのは、大森一樹監督の映画『ヒポクラテスたち』だった。1980年の作品である。
これは京都府立医大出身の大森監督の経験を生かした群像劇で、医者を目指す医大生の最後の一年、「ポリクリ」と呼ばれる病院実習を中心に描かれている。主人公の荻野愛作を演じるのは古尾谷雅人。共に「ポリクリ」を過ごす仲間にはすでに妻子がいる年かさの学生役で柄本明、キャンディーズ解散後初めての出演作だった伊藤蘭。そして愛作は大正時代に建てられた京都の古い学生寮に暮らすという設定だったが、そこには留年を繰り返す先輩役で斉藤洋介、山田太一脚本のテレビドラマ『それぞれの秋』で人気のあった小倉一郎。
また、当時の大学生というのはほとんどが反体制派だったが、中でも特に過激な左翼活動家を演じていたのが内藤剛志。それに反して寮内ではいつも剣道着で過ごし、少々右翼的で保守反動ではあるのだが、根はとても気のいい学生役だったのが阿藤さんであった。そして蘭ちゃんと小倉一郎以外は全員ほぼ無名だった。先に書いたように公開は1980年だが、この出演者の顔ぶれを見ると、やはり70年代を象徴する青春映画であったと思う。古尾谷雅人が2003年に自ら命を絶ったのはご存じの通り。70年代は本当に遠いものになってしまった。ご冥福をお祈り致します。
※写真はYouTubeに上がっている
『ヒポクラテスたち』の予告編より。伊藤蘭と光田昌弘。作中二人は恋人同士という設定だが、これはキスシーンではない。マウス・トゥ・マウスの実習。data:iPhone6 #instaplus #Normal #503CW