北海道では平地でも雪が降ったそうだが、東京も急に冷え込んだ。今朝は明け方少し前、寒くて眼が覚めてしまった。夢を見ていた。僕はマクドナルド風の洒落たファストフード店で、カウンターに並びタコ焼きを注文するのだが、店員は眼の前にあるバルブを操作して粉を出し、自分で作れという。やってみるが上手くいかない。何度やっても粉がまとまらないのだ。するとその若い店員は人を見下したように笑い、「お客さん、ダメだね。才能がない。ウチの店に向いてないよ」と言う。僕はカッとして「じゃあ、いいよ」と手の中の粉をそいつに投げつけてカウンターを離れた。
店の出口には、僕が付き合っているらしい若い女の子がいる。目覚めてから気づいたのだが、現実では一度も会ったことがない、まったく知らない娘だ。ジーンズにスタジアムジャンパーを着た、歳は20代半ばくらいだろうか。地味で決して美人とも可愛いらしいとも言えないのだが、彼女が誰よりも優しい気持ちの持ち主だということを、夢の中の僕はよく知っている。「こんな気分の悪い店はやめよう」と僕は言うが、その娘は「でも私、とてもお腹が空いているの」と心細げに呟く。僕は彼女の肩を抱いて外に出ながら「どこかファミレスにでも行こう」と言ってみるが、「この辺にファミレスなんてきっとないよ」と、ますます不安そうだ。
確かに外は真っ暗で、通りには人っ子一人歩いていない。僕は「日比谷に行けば居酒屋がある。一度行ったことがある」と、彼女の肩を抱いたまま歩き始めた。日比谷、ということは僕らがいるところは有楽町かその辺りであるはずなのだが、そこは夜になると人の姿が一切消えてしまう、たとえば霞ヶ関などの官庁街みたいだ。「寒いわ、凍えそうよ」と腕の中で彼女は言う。「大丈夫、居酒屋に行けば、きっと温かいものが食べられるよ」と僕は言い、「わたし、湯豆腐が食べたいな」「うん、そうしよう、温かい湯豆腐を食べよう」と、暗く冷たい道を歩いているところで眼が覚めた。何とも切ない物語の終わり方だった。
※冬が近づくと夜のショウウインドウの灯りが、切なくも暖かく感じるのは僕だけでしょうか? 写真は神保町にて。data:iPhone6 #instaplus #Azoic #CRT