東京は雨の一日。こんな冬に雨なんてめずらしいのではないか、と思い、そうか、「12月の雨の日」なんだ、と気づく。大滝詠一さん作曲によるはっぴいえんどの名曲である。大滝さんの一周忌が近づいている。はっぴいえんどというバンドを初めて知ったのは、
『'71全日本フォーク・ジャンボリー・ライブ第一集 <中津川 椛ノ湖 人間開放72時間>』というライヴアルバムだった。4つ年上の兄貴が持っていたのを、彼の部屋へ忍び込んでこっそり聴いた。何故<忍び込んでこっそり>なのかというと、見つかると「お前みたいなガキがレコード触るんじゃねーよ、傷がつくだろー」と怒られるからです(涙)。1971年と言えば確かに僕はまだ中1のガキだったし、兄貴が言うようにレコードというものは貴重品であった。
このアルバムにはオープニングを飾る加川良の「教訓Ⅰ」、高田渡に加え、加川良のギターと岩井宏のバンジョーの入った「自転車にのって」、エレクトリック編成の六文銭をバックに従えた吉田拓郎の「人間なんて」と名演が数々収録されているが、B面のラストを飾るのがはっぴいえんどだ。大滝詠一さんのあの、ほとんど口を開かない特徴的なしゃべり方で、「では次に
『12月の雨の日』を──」というMCがあって曲が始まる。子供心に、「ああ、これがロックなんだ」と思った。まず響いたのは松本隆さんによるその詞だった。今聴くと演奏は非常にサイケデリックにしてヘヴィなのだが、言葉には何らメッセージ性もなくこれと言って何かを声高く主張するでもなく、ただ淡々と雨の日の情景が描写される。そんなクールな文学性こそが、僕にとってのロック体験だった。はっぴいえんどこそロックという気持ちは、今も変わらない。
※写真は本日午後4時過ぎ。近所のコンビニに宅急便を出しに行った時に写す。data:ニコンD70、AF-S DX Zoom Nikkor ED 18-55mm F3.5-5.6G。ISO・200。