数日前、女友達から「宮崎駿監督の『風立ちぬ』が観たいんだけど」というリクエストがあり、「わかった。予約しとく」と答えたものの朝起きると強烈な台風である。案の定中央線は「強風」のため運行見合わせ。しかし西武新宿線が遅れつつも動いていてくれたので、何とか新宿のシネコン「バルト9」までたどり着くことが出来た。ところで、こういうことをおおっぴらに言うとファンの人から怒られそうなのでこれまで黙っていたのだが、僕は今日まで宮崎駿監督の作品を観たことがなかった。いや、正確に言うと最後まで見通したことがなかった。やはり話題作ばかりなのでテレビで放映されるたび受像機の前に座ってはみるのだが、どうしても途中で挫折してしまうのだ。いや、近藤喜文監督の『耳をすませば』もそうだったから、宮崎作品というよりもスタジオジブリ、もっと言えばアニメーション映画というものがよく判らないのかもしれない。
というようなことを以前年上の友人に言ったところ、「それはお前が宮崎アニメを頭で考えて観てるからだ。あれは考えるものじゃない、感じるものだ」というようことを言われた。その人がデザイナーだったということもあり、その意見にはひどく説得力があった。というわけで今回はあまり考えず、というか睡眠不足ということもあったので、眠いボーッとした頭でスクリーンに向かいました。すると、あれはどれくらい史実と合っているのだろうか? 主人公の二郎がヒロイン・菜穂子出会う汽車のデッキや、カプローニさんが設計したフロート水上機、二郎と本庄が乗り込むユンカースの大型爆撃機の機内、さらに二郎と菜穂子が出会う軽井沢のホテルの造形などが、初めて観るにも関わらず何故か懐かしい。映画が終わったのが午後3時半。
そこから下北沢へ行って、開いたばかりの居酒屋でビールを飲み少し早い晩ご飯を食べて友人と別れ、夜7時には自宅へ戻って寝てしまった。すると宮崎駿作品のような総天然色の夢を見た。そう言えば『風立ちぬ』も冒頭からラストまで、二郎とカプローニ氏の夢が交錯する物語だったのだ。