約1週間ぶりで部屋の外に出た。いよいよ台所に食材がなくなったのだ。我が家からいちばん近いスーパー、いなげやまで。仕事はやってもやっても終わらない。東京は梅雨入りしたというわりには爽やかな風が吹く。しかし気分は暗く、片道約20分の道のりをとぼとぼと歩く。スーパーに行く時は必ずiPhoneの〈メモ〉に買うべきものを書き出していく。せっかくだから音楽でも聴こうかと思うのだが、心身共に疲れ切っている時には自分が何を聴きたいのかも判らない。歩きながら〈ミュージック〉のリストをクルクル廻していると、「安達かおる」というアーティスト名があった。曲ではない。
5月4日の日記に書いた『ビデオ・ザ・ワールド』誌最終号の取材音源だ。
丸15年続けたカンパニー松尾・バクシーシ山下両監督による鼎談「山松対談」。その最終回のゲストとなったのが、お二人の師匠にあたる安達かおる監督だったのだ。再生して聴きながら歩いた。取材が行われたのは4月8日。まだ2ヵ月経っていないのだがもう懐かしい。遠い昔のようだ。考えてみればあれが、僕のAVライターとしての最後の取材だった。その意味では、想い出深い仕事になって良かった。