食材を買いに行かなければならないこともあり、陽が暮れてからジムへ。そこから100メートルほどのところにコンビニがあり、帰りに寄って御霊前の袋を買った。昨日19日の朝、何気なくiPhoneを見ると平野勝之監督からの留守電が入っていた。少し前京都で作家の花房観音さん主催の平野作品上映イベントがあり、またそのような催しのお知らせか何かだろうと思って聴いた。しかしそれは「長らくご無沙汰してます」と始まったものの、「すみません、取り急ぎ用件だけ入れさせてください。本日、由美香ママが亡くなりました。お通夜は21日の──」と続いた。驚いた。映画
『監督失格』をご覧になった方なら判ると思うが、男勝りで気っぷがよく、気持ちは優しいが時に口は悪い。都内の5軒展開する人気ラーメン店「野方ホープ」を一代で築き上げた女社長である(※由美香ママこと、小栗冨美代さんに関しては『監督失格』HPに週刊女性
「人間ドキュメント」が掲載されている)。
亡くなってしまうなんて想像もしなかった。娘の林由美香ちゃんが1970年生まれだから僕よりちょうどひと廻り下。だからママもそれほどのお歳ではなかったはずだ。しかし後から花房観音さんがmixiで限定的に公開している日記を読むと、以前よりお身体の具合がかんばしくなかったらしい。今年に入って入院もされていたとのこと。最後にお会いしたのは2011年の3月、『監督失格』の完成試写だった。というか、お話させて貰ったのはそれが最初で最後になってしまった。上映が終わり平野監督に一声かけて帰ろうとしたら、由美香ママが一緒にいらして、彼が気をきかせ「こちら、ライターの東良さん」と紹介してくれたのだ。僕は「由美香さんとは生前親しくさせて頂いてました」とお伝えすると、「それはそれはお世話になりましたねえ」と丁寧に頭を下げてくださった。
平野くんは他の招待者・関係者との挨拶に追われながらも、待合室でママの座る椅子を探したりしていて、まるで本物の親子のようだった。後からそれを言うと、「そうなんだよ、最近は顔まで似てきたって言われてさあ」と笑っていた。思えば由美香ちゃんが亡くなった時、彼女と平野勝之は既に恋人同士でもなかったのだ。それが、林由美香という一人の女優が残した遺言ともいえる映画が、平野と由美香ママを親子のようにした。それもまた早くに去った娘の、残された母への想いだったのかもしれない。
※Facebookの
〈『猫の神様』ページ〉、本日も更新しております。