一日中原稿書き。夕方になって冷えてきたので、
10月30日の日記で書いたように、押入の奥から羽毛のシュラフを出す。おそらく15年以上はザックに入れっぱなしで、そのザック自体がカビまみれだったのでこれはマズイかなと思ったのだが、シュラフは湿りもせず実に健全な状態であった。うーん、たいしたものだ。かすかに灯油の匂いがする。ふむ、そう言えば天幕生活で使うあのストーブというヤツは、灯油やガソリンを燃料として使うのだった。ストーブと言ってもココでの意味は暖房器具ではない。いわゆる野外調理用のコンロである。ラジュースとかマナスルとか呼んでたっけと思って調べてみると、〈ラジュース〉はメーカーの名前で、〈マナスル〉は商品名だそうだ。さてシュラフの方には早速足をつっ込んで、ミノムシ状になりiMacに向かう。ヒジョーに具合がよろしい。とても軽い。もちろん暖かい。
これはヒルネにも使えるな、と思う。寝袋の中に入り込んでソファーに転がる。部屋に紙袋や段ボール箱を散らかしたままにしておくと、いつの間にかネコが入り込んで丸くなって寝ているということがあるが、あれに近いかもしれない。夜、珈琲を入れようと台所に立ち、何気なくテレビを点けるとプロ野球をやっている。そうか、日本シリーズなのか、と思う。ご覧になった方も多いと思うが、ちょうど日ハムの多田野投手が巨人・加藤選手に投げたボールが危険球と判断されたところだった。スローのリプレイが流れ、「こりゃ柔道ならジュリーが出て来て覆るところだな」なんて思う。めずらしく少し熱くなっていたようだが、怒りを抑えてベンチに座り直す栗山監督はカッコよかった。
この世に不条理なことは必ず起きる。正しく異議申し立てはするものの決して嘆かず取り乱さず。男子たるものすべからくこうでありたい。15年間持ち主から邪険に放っておかれてもカビひとつ生やさず、淡々と自らの出番を待っていたシュラフのように。