6時起床。一昨日の日記でハローワークのサイトで職を探していると書いたら、旧い友人のカメラマンから連絡を貰い、「トーラは一応写真も撮れるんだから、〈カメラマン.com〉で検索してごらん。今はデジタルなので後の加工ありきだからクオリティが低くてもOKという場合もあるし、スナップ程度の仕事もあるよ」と教えてくれた。早速サイトを覗いてみると、数は少ないのだが「取材ライター&カメラマン募集」というものがあった。中でも一冊のオートバイ雑誌の「特にライターさんは常時募集しています」という一文が眼を惹いた。どうやら関東近県の各店舗を廻って中古バイクの写真を撮り、データを集める仕事のようだ。これなら自分にも出来そうだと、会社が始まりそうな10時過ぎを待って電話してみる。呼び出し音を聴きながら、考えてみたらこうやって応募の問い合わせをするのは大学を卒業して約半年後、初めてヌードグラビア誌を作る出版社にバイトで入った時以来だな、と思う。つくづく運のいい人生だ。何しろこれまでずっと、先方から依頼される仕事だけでやって来れたのだ。
結論から言うと僕の見た募集広告は古かったらしく、今は専門的なライター以外は探していないとのこと。しかし応対してくれた、声の感じからすると30代くらいとおぼしき編集さんはとてもいい人だった。「やはり経験がないと難しいでしょうか」という僕の問いに、「初めてですが一生懸命頑張りますと言ってくださる方は多いんです。僕らとしてはそれも嬉しいのですが、テクニカルな知識がないとご自身が相当ご苦労されるんです。正直申し上げて続けられません」と教えてくれた。「判りました。お忙しいところありがとうございました」と電話を切り、あー、いい人で良かったと胸をなで下ろす。「ダメダメ、バイクの知識のない奴なんかに書かせられねーよ。シッシッ!」なんて言われたら、チキンなハートなオレはそれだけでメゲていただろう(涙)。するといいことは続くもので、「よし、気合いを入れて次いこう!」とiPhoneを手にしようとした時、昨日別件があって電話で話した同業のライターさんからの着信が鳴った。「今私がやってる仕事なんですけど、トーラさんさえよければ来週引き継いでみます?」とのこと。
東京のとある区のタウン誌取材だそうだ。「やりますやります、何でもやります、今すぐやります、はあはあ」と荒い息で答える。編集さんのメルアドを送って貰い早速連絡。商店街のクーポン券付きフリーペーパーのようで、お店を10数件廻ってデータを集めるらしい。担当さんは女性で、返信には「ランチ付けますよ」とあった。「おー、昼メシ付きかー!」とガッツポーズ。単発だしわずか一日だけの仕事だが、とにかくココから始めてみよう、と思った。正直なところこの2週間ほど、ガラにもなく考えに考えた。職業ライターであることはもうあきらめて、たとえば週に5日肉体労働をやり、残りの2日でコツコツ単行本を書く。そういう生き方もあると。しかもそれが出来るのは、もうすぐ54才になる今しかないかもしれない。あと5、6年したら無理かもしれないのだ。
だけど自分はやはり、印刷物とかネットとか、そういうメディアに関わることが好きなのだ。出版業界以外の方にはなかなかご理解頂けないのだが、年1冊くらいのペースで単行本を出すだけでは絶対に生活していけない。特に僕のような本の売れない作家は尚更だ。ただ、著作があると名刺代わりにはなりやすい。実は11月半ばには新しい本が出る(←これについては来週くらいには正式にお知らせ出来るかと思います)。これを機に新しい仕事を少しずつ探していこうと思った。担当さんに「条件等承知致しました。よろしくお願い致します」と返信を出した時、そう言えば今朝、Facebookの「友達」申請のメッセージが来ていたな、と思い出した。見ると、先に「大学を卒業して約半年後、ヌードグラビア誌を作る出版社に入った」と書いたけれど、その時のバイト仲間だった。つまり約30年経って、元のスタート地点に戻ったわけだ。
※タイトルの
『ふりだしに戻る』はジャック・フィニィによる傑作SFタイムスリップ小説。