8時に起き、簡単な朝食をとりストレッチとシットアップをして、さてジムへ出かけようとテレ朝『サンデープロジェクト』を観ながら着替えをしていると、「中川昭一元大臣、自宅で死去」という速報が流れる。その後の続報によれば、不眠を訴え睡眠薬を処方されていたとか、8月の衆院落選後は酒も飲んでいたらしいという情報も出て来た。この人に関しては例の朦朧会見の後、2月16日に
「笑えない理由」という日記を書いた。突然の訃報、大きな驚きではあるのだが、決して予想出来なかった事態ではない。そのぶんやり切れない。
世の中には、生きていくことが普通の人より大変な人というのがいる──こう書くと少し大げさかもしれない。けれど例えば常に早起きで朝から元気いっぱいで、昼も精力的に働き、夜は家族で楽しく食事をしたりして過ごし、安らかに眠りにつける人がいる一方、朝はどうしても起きられず、昼は昼で何となく体調が悪い、かといって夜になると何故か眠れない、常に言い様の無い不安を抱えて過ごしている──そんな人だっているものだ。このようなパーソナリティを持つ人は、多分にアルコールや睡眠薬に依存しやすい。
こういう傾向は、親から子へと引き継がれる場合が多い。今日もニュースではやはり若くして自殺した父・中川一郎氏との、因縁めいた享年の近さが何度も語られた。それは単にライフサイクルの類似にも寄るだろうし、遺伝的な側面もあるだろう。やはり酒好きで知られ、肝臓癌で若くして亡くなった古今亭志ん朝師匠は、「あたしはどうも眠るてぇのが苦手で、夜になるとつい酒を飲んじまう。これは親父(5代目古今亭志ん生)も同じだった」というネタを、噺のマクラに振っていた。
2月に「笑えない」と書いたのは、僕自身も多分に父親から、同様な傾向を引き継いでいるからだ。政治家や噺家とは比べようがないとは思うが、ウチの父の場合は俳優という職業が、彼のパーソナリティに対し、あまり良くない影響を及ぼしていた。役者というのはよほどの大スターでない限り、自分で仕事を選び獲得することが出来ない。すべてはプロデューサー、演出家、監督という人々の意向に委ねられている。もちろん、俳優自身が芝居をプロデュースしたり劇団を作ったりというのも決して不可能ではないのだが、我が父の場合、妻と二人の子供を食わせていくことを考えるとそういう選択肢は取れなかった。
これと言った趣味が無いことも災いしたと思う。彼はまるですべてのストレスをそれで発散するように、毎晩大量の酒飲み、戦後の食べ物の無い時代に育ったこともあり、必要以上に脂っこい食事を好んだ。そのせいで中年以降は高血圧に苦しみ、常に薬を手放すことが出来なかった。晩年は糖尿病も併発し、最後は血管が詰まり大動脈瘤破裂で死んだ。62才だった。中川昭一氏は父親から安定した地盤を引き継ぎ、優秀な頭脳と政治家としての才能を引き継いだ。けれど同時に負の連鎖も請け負ったはずだ。それはまるで父と子を結ぶ、逃れられない運命のようだ。いや、幻影といった方がしっくり来る。あるタイプの子供達はそれと戦い続ける。勝つ時もあれば負ける時もある。