ヨドバシカメラ吉祥寺店の前ではタクシーが拾いにくいように思えた。決められた乗り場は中央線ガード下にある。普通に歩いて約1分といったところだが、iMacを持って歩けるのだろうかと心配だった。しかし、1階奥のレジで支払いを済ませ、アップルらしい外箱まで洗練されたその取っ手付きパッケージを下げてみるると、まずその軽さに驚く。いや、その前に売り場に入った時、「あれれ、シネマディスプレイばかりで何処にもiMacがないじゃないか?」とも思ったのだ。
僕の勘違いだった。本体と一体化したディスプレイがあまりに薄く、キーボードが小さくてMacBook Air並みに薄かったのでシネマディスプレイと見間違っていたのだ。あれは1990年だったか、初めてワードプロセッサーを買った夜のことを思い出した。場所は当時あった渋谷のヨドバシカメラ。パナソニックの上位機種で、フロッピーディスク・ドライブが二つ──ひとつは保存用でもうひとつは辞書とデータベース用──ついていた。定価で25万円くらいするものが、店頭展示されてたので安く買った。それでも20万以上はしたと思う。
何せ手と原稿用紙以外で文字を書いたことが一度も無かったので、職業柄早くワープロを導入していたコピーライターの女友達に付き合って貰った。お礼に夕食を御馳走する約束だったので、包装して貰ったその箱を持って適当な店のありそうな場所まで移動しようとしたのだが、冗談のように重かった。何とか渋谷東急裏の酒場まで運び込んだが、これはもう電車で持って帰るなんて絶対無理と思い、この日記にはよく登場する『ビデオメイトDX』のマツヘンこと松沢編集長に電話し、会社で仕事をしていたところを無理に頼み込んで車で迎えに来て貰った。それに比べるとこの新しいiMacは圧倒的に軽い。値段もそのワープロの半分近く。20年近い時間が経っているとはいえ、この技術の進歩には愕然とする。
頑張れば電車とバスを乗り継いで帰れるほどだったが、時間もかかるのでガード下のタクシー乗り場まで歩く。家に戻ったのが夕方5時過ぎ。買い物にもいかねばならないのでジムへ行き、夜になって「いざ」という感じでセットアップを始める。まずは散らかり放題のデスクから旧iMacG4他、スキャナー等周辺器機を床に下ろし雑巾で綺麗に拭く。「箱から出してインターネットに繋ぐまで5分」というのがアップルのキャッチフレーズだが、確かにセットアップは簡単だ。ただ、此処ですべての設定をしっかりやっておかないと後々面倒なことになる。それに、まだ旧iMacG4のハードディスクが無事で、データを移行出来るとは限らないのだ。珈琲を入れ、「さあ、落ち着いていこう」と背面にある起動スイッチを押した(明日に続く)。