午前中から所用があって実家へ向かうのに、久しぶりに小田急線に乗った。知らない間に快速急行というものが走っていて、下北沢から新百合ヶ丘まですべての駅をスッ飛ばして走る。ムチャクチャ早い。後で義姉に聞いたところ去年から走り始めたという。結局、ベッドタウンの南下がどんどん進み、新百合ヶ丘以南の人口が圧倒的に都心寄りを上回ったのだろう。
僕が子供の頃まで川崎南部では多摩川を渡って二駅目の、向ヶ丘遊園の駅前が圧倒的にいちばんの都会(?)だった。特に六〇年代後半に出来たダイエー向ヶ丘店は僕が眼にした初めてのアメリンナイズされた郊外型ショッピングモールで、たぶん今見ると狭くてたいしたコトないのだろうが、子供心にはハワイのアラモアナ・ショッピングセンター並に広くて洗練された建物に見えた。
三階に「すみや」という大きなレコード屋があって、中学から高校にかけて二ヶ月に一度くらい小遣いを貯めてはレコードを買いに行くのが楽しみだった。クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの
『4ウェイ・ストリート』もニール・ヤングの
『ハーベスト』もアル・クーパーの
『アイ・スタンド・アローン』も全部そこで買った。さっきアメリンナイズと書いたけれど、たぶんそこがあの頃僕の憧れたアメリカという土地にいちばん近い場所だったのだろう。
向ヶ丘遊園というくらいだから実際に少し離れた場所に遊園地があって、駅前からモノレールが走っていた。だけど駅前は今やすっかりさびれ遊園地も2002年に閉園になったそうだ。そう言えば小田急線が多摩川を渡る時、多摩丘陵の上に見えていた向ヶ丘遊園の大観覧車が見えなかったような気がした。撤去されたのだろうか?
昔々大学に行ってた頃、同級生の女の子と向ヶ丘遊園の大観覧車に乗ったことがあった。何だってあんな辺鄙なトコにある遊園地にデートに行ったのだろうと考えて思い出した。実家に連れて行って親に紹介し、その日は泊まって翌日帰る前に途中下車して向ヶ丘遊園に寄ったのだ。ということはオレ、あの娘と結婚するつもりだったんだな、なんて他人事みたいに思った。向ヶ丘遊園があの頃とまったく別の街に見えるように、若い頃の自分も時々まったくの別人に思える。