今日も6時起床。夜明けと共にjog、118分。夜、新宿でとある編集さんと会う。全国の焼酎が多数取り揃えてあるという酒場に案内して頂き、
「舞香」というブランドを教えて貰う。「香りがね、まさに麦。麦チョコのようなんですよ」と言われ、味わってみると確かにその通り。グラスに顔を近づけると、甘く香ばしい匂いが鼻をつくのだが、ひと口含むと如何にも上質な麦焼酎らしく、キリリとした辛口の味わい。ロックでいただき、天然水のチェイサーで口をリフレッシュしてはまた飲む。薩摩揚げやだし巻き玉子といった淡泊なつまみが合う。僕は長年「酒は酔っ払うために飲むもの」という姿勢を貫いてきたが、この歳になってやっと味がわかってきた気がする。まあ、オヤジになって単に酔うほど飲めなくなったという理由かもしれませんが(笑)。
この人は僕が2004年に
『追想特急〜lostbound express』を書き始めた頃から読んでくださり、「一緒に仕事をしましょう」と連絡をくれたことから知り合った。非常に高級感があってクオリティの高い男性総合誌の編集長をしていた。原稿は時々書かせて貰っていたものの、とても忙しい人なのでなかなか会う機会がなかったのだが、昨年暮フリーになられたので、「仕事抜きで会いましょう」ということになった。しかし、お互い雑誌が心の底から好きなので、やはり話題はそういう方面へと進む。
彼のやっていたような、いわゆるメジャーな月刊誌というのは、出版の世界にいる者なら知っていることだが、単純な売上げ部数だけではなく企業からの何千万という莫大な広告費によって成り立っている。ただ、現在はその広告も雑誌媒体だけではなく、webとイベントを連動させないと効果が上がらない構造になっているそうだ。つまりは雑誌のコンセプトによって企業のサイトへと顧客を流れさせ詳しい情報を与え、さらに有名な作家の講演会などを催し読者との一体感を演出するわけだ。確かに上手い方法論だと思う。
ネットというのは確かに便利なのだが、アップされている情報は単に羅列されているだけだ。それに優劣を付け、読者にお勧めをアピール出来るのは未だ雑誌の方が強い。何故なら、インターネットは究極的にはヴァーチャルだからだ。それに比べ、雑誌というのは何と言っても実際に手にした時の手触りがある。その実感が、商品や情報に対する説得力を生む。例えば『GQ』や『エスクァイア日本版』といった雑誌が高級感溢れるアート紙を使い、ずっしりと思いのはそのためだ。さらにwebを見ているだけでは基本的に人間は孤独だから、何処かで他人と繋がっていたし、価値観の共有もしたい。そこでイベントの必要性が生まれ、企業はそこに集まって来る人々の個人情報を得ることが出来る。年齢、家族構成、おおまかな収入、趣味思考etc. それによって新しいターゲティング広告を制作していく。
11時を過ぎ、「そろそろ帰りましょう」と方向が同じなので中央線に乗る。すると御茶ノ水で人身事故があったとかで電車はなかなか動き出さない。不慮の事故かもしれないが、この御時世なので、どうしても誰かが人生を儚み身を投げたのでは想像してしまう。死のうと思う前に、人は誰かと繋がろうと考えるべきではないか。色々と取り沙汰されている「年越し派遣村」も、野党は政治問題にしたがり、活動家達は運動にしたがっているようだが、それ以前にもっと大切なのは、「大変なのは俺だけじゃない」「寂しいのは自分だけではない」のだと──それを確認し合うことだと思う。