遅い朝、110分走る。時々パラパラと雨が落ちる。手が冷たい。そろそろ手袋が必要だな、と思う。冬が一歩、また一歩と近づいて来るのが判る。昨日、バスで清瀬から帰る途中、車窓を眺めていて、久しぶりに心が冷たく乾くような寂しさを感じた。それはこの東京の外れ、西武バスが走る一帯特有の侘びしさだ。18年前この土地にやって来て、初めて冬を迎えた時には驚いた。引っ越したのが6月。夏を過ぎ、木々が落葉を始めると、此処には本当に何も無くなってしまう。青々と繁る燃えるような緑を誇る土地だから、その何も無さはひときわ響く。都会が紅葉の季節を過ぎてから、イルミネーションで賑やかになるとは正反対だ。
部屋の中でもまたひとつ冬支度。トイレにヒーターを出した。それと新しい珈琲のパッケージを開ける。UCCの炭焼珈琲(210g)というのが僕のお気に入り。けれど歳を取るごとに珈琲の消費量も減っている。夏場はほとんど飲まないので、密閉容器に入れ替えていても、昨日までのは相当香りが逃げていたのが判る。開けたてをペーパー・フィルターに小さじ2杯半、お湯を注ぐと部屋中が珈琲の匂いに包まれる。これもまた冬の始まり。最近ははっと気が付くと陽が落ちていて、取り込み忘れた洗濯物が冷たくなっている。